2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J55181
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野村 尚利 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄系超伝導 / 結晶構造解析 / 放射光 / LaFeAsO |
Research Abstract |
本研究では、様々な結晶の構造をうまく活用した新規物性の探索および解析を主な目的としている。昨年の二月に、本研究室において鉄をベースとした新しい高温超伝導体LaFeAsO_<1-x>F_x(Tc=26K)が発見され、世界的な注目を浴びた。以来、集中的な研究が行われ、三ヶ月後には中国の研究グループが、SmFeAsO_<1-x>F_xでTcが55Kまで上昇したことを報告した。鉄系超伝導体のTcがBCS理論の上限である40Kを超えたことで、銅酸化物に続く第二の高温超伝導体として、そのメカニズムの解明や更なる特性の改善が急がれている。我々は、LaFeAsOの電気抵抗が低温で異常な挙動を示すことに目をつけ、この物質の低温粉末X線構造解析を行った。その結果、LaFeAsOの母物質は、低温で正方晶から斜方晶へと構造相転移を起こすことが明らかになった。一方、F置換した超伝導体では、構造相転移は起こらず、超伝導相では相転移が抑制されていることがわかった。また、LaFeAsOの第一原理計算から、斜方晶の結晶構造をとることで、Fe上のスピンがストライプ型に秩序化し、反強磁性相が安定となることが導かれた。銅酸化物系の母物質も反強磁性を示し、またその高温超伝導には反強磁性ゆらぎが関係していると考えられていることから、鉄系高温超伝導の発現にも似たメカニズムが関係していることが示唆される。今後の研究に期待が持たれる。 我々は、新物質の合成にも取り組んだ。LaFeAsOと同じ構造を持つ、CaFeAsFとSrFeAsFの合成に世界で初めて成功し、Fe位置の一部をCo原子で置換することで、CaFeAsFでTc=22K、SrFeAsFでTc=4Kの超伝導を確認した。次に、AeFeAsFの構造解析を行い、CaFeAsFのFeAs層中のFeAs_4四面体の形は正四面体に近い一方、SrFeAsFのFeAs_4四面体は正四面体から離れた形であることを確認した。これより、FeAs_4四面体の対称性がその超伝導特性に重要だとする経験則を裏付けた。
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Research Products
(7 results)