2008 Fiscal Year Annual Research Report
コナラ属の性比配分戦略が結実動態に及ぼす影響:空間明示モデルによる豊凶リスク検討
Project/Area Number |
07J55231
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
秋田 鉄也 Yokohama National University, 大学院・環境情報研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 豊凶 / 性比 / 進化ゲーム / 花粉制限 / ブナ科植物 / カオス / 個体ベースモデル / 数理モデル |
Research Abstract |
多年生植物の開花・結実は大きく年変動し、様々なスケールで同調することが知られている。この現象は豊凶(masting)と呼ばれ、その至近要因や究極要因を探るために長年研究が実施されてきた。本研究では、ブナ科に代表される雌雄異花同株(monoecious)植物を念頭において、どのような結実動態が適応的であるかについて、各個体の資源貯蔵・配分メカニズムを基礎とした数理的解析を実施する。特に、相対的な繁殖成功度の概念を導入することによって、集団内の性比が頻度依存淘汰によって変化してゆく進化機構を想定する。具体的には、配分される資源量そのものが大きく年変動し、さらに花粉交換を通じて空間的に同調するといった状況下における性比進化動態を、進化ゲーム理論を用いて明らかにする。 平成20年度においては、資源動態モデルおよび進化ダイナミクスをより洗練させ、結実動態に関する多型が出現する条件を解析的に算出した。主要な仮定は以下のとおりである、1)送受粉過程は集団内の無作為交配だが花粉制限がある、2)個体が枯死した場合は、繁殖貢献度が高い個体の子孫ほど替わりに侵入しやすいとし、集団中の個体数(=500)は一定を保つ、3)更新の際に様々な大きさの突然変異によって雄花と雌花の投資比の値が変化する。 解析の結果、雌花と結実の投資量比および花粉結実強度の双方がある程度以上の大きさの環境下では、複雑な結実年変動が二型に伴って選択されることが示唆された。この条件下では、性比の進化は二型を維持しながらも収束することなく、時代によって多様な結実動態が引き起こされた。この遷移進化はノイズに対しても頑健であり、一般性の高い現象であることが示唆された。なお、用いた資源動態モデルは古典的な性配分モデルの拡張として一般化され、さらなるモデリングの礎となることが期待される。
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Research Products
(4 results)