2007 Fiscal Year Annual Research Report
メーテルランク『青い鳥』における内的幸福について-草稿研究の観点から-
Project/Area Number |
07J55271
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内田 智秀 Nagoya University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メーテルリンク / 青い烏 / 草稿 |
Research Abstract |
本研究はモーリス・メーテルランクの『青い鳥』の幸福について、ベルギー王立図書館所蔵の1904-1905年の『日付入り作業手帳』を解読、調査することで、「幸福は身近なところにある」という教訓で隠れてしまった部分を明らかにすることにある。 初年度取り組んだのは『青い鳥』、またその制作時期にあたる書簡の解読、転写を行存うとともに、先行する研究論文、研究書の収集を行った、これまでメーテルランクの草稿研究は数が少なく、特に『青い鳥』の草稿は研究対象にこれまでなっていなかっただけに、これを研究する意義は大きい。現在解読作業はほぼ終えている。一方書簡は『青い鳥』の制作状況、あるいはメーテルランクの思想活動を探る上で重要な資料となる。この中で『青い鳥』の執筆を始める2年前、メーテルランクが友人に送った青い鳥に乗った兄妹を形作った山車の絵はがきは、作品起源に言及したどの論文よりも説得をもつ点で重要であるともに、この作品を『アリアーヌと青ひげ』のように、原作を劇作家自らの解釈をもとに再構築された可能性が『青い鳥』にはあるだけに、より劇作家の思想活動が色濃くでている作品であることを確認できた。 『青い鳥』の思想について言えば、『知恵と運命』を読解、整理した。メーテルランクは、人間は幸福のために作られており、いつか幸福になると希望をもつことが重要であるとしている。この希望をもつ考え方は『青い鳥』の草稿にも残っていることから、初年度はこの点を検討し、その成果を日本フランス語フランス文学会中部支部(2007年9月29日)にて発表した(タイトル:「あいだ」にみる『青い鳥』の幸福について).
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