2008 Fiscal Year Annual Research Report
テナガザルのDNA解析による人類の家族起源に関する進化人類学的研究
Project/Area Number |
07J55281
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
親川 千紗子 Kyoto University, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | アジルテナガザル / ペア型社会 / デュエット / 父子判定 / プレイバック実験 |
Research Abstract |
テナガザル類の「ペア型社会」など彼らの社会構造やユニークな行動である歌の役割を改めて見直すことを目的に研究をおこなってきた。テナガザルのペア型社会においても婚外子が産まれているという証拠や歌の役割を再検討するために、DNAサンプルの収集や音声収集・分析、行動観察、そして野外でのプレイバック実験を野外で行ってきた。 DNAサンプルは野生動物が対象であるため収集が非常に難しく、今後サンプルを増やす必要がある。しかし、音声データおよび行動観察データは十分に収集することができた。行動観察においては、雄雌の関係性を明らかにするために、かれらのグルーミング行動を記録し分析した。結果、雄が雌に行うグルーミング行動が逆の場合の数倍の時間を要していることが分かった。つまりグルーミング行動の観点から言えば、テナガザルは雄による雌への投資が大きいことがわかった。また、収集した音声を編集し、デュエットの役割を再検討するためにプレイバック実験を行った。縄張りの中心ポイントと隣群と縄張りが重複するポイントでのプレイバック実験をおこなった。結果、隣群との重複ポイントでの刺激では、テナガザルペアは対抗するようにデュエットを始めた。しかし縄張りの中心ポイントでの刺激に対しては、デュエットによる反応ではなくじっとその場を動かないという反応をした。この実験から、デュエットは縄張り防衛という、これまでいわれてきた役割と一致する結果が得られた。しかしプレイバックする場所によって反応が異なることから、柔軟に反応を変化させることができることが分かった。ペア型社会の再検討をおこなう上で基礎となる貴重なデータを収集することができた。
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Research Products
(3 results)