2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規縮環構造を有する環状芳香族化合物の創生と機能化
Project/Area Number |
07J55451
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 慎也 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / 近赤外 |
Research Abstract |
私は3つの五員環が縮環した構造を有する18π環状化合物、N-フューズポルフィリン(NFP)を中心として、その光学特性、金属錯体形成能を利用して近赤外発光素子への展開を目指してきました。NFPは18π芳香族化合物としては異常に小さいHOMO-LUMOギャップを有することが判明しました。通常のポルフィリンの吸収末端が約640nm付近であるのに対して、NFPでは吸収末端は1000nm以上にまで伸長していました。計算化学によってその電子状態を調査したところ、HOMOにおいて、芳香族サーキットの内側に位置したC=N二重結合に大きな反結合性の寄与があることが判明しました。このC=N二重結合の寄与によって、HOMOのエネルギーレベルが大きく上昇していることが分かりました。一方で、LUMOではC=N二重結合の寄与はほとんどなく、エネルギーレベルもほとんど変化していませんでした。近赤外蛍光色素への応用を目的として、蛍光測定を行ったところ、980nm付近に蛍光極大を有することが判明したが、発光効率は非常に小さいものでありました。励起状態の失活過程を調べるために、励起寿命測定を行ったところ、他の18π芳香族ポルフィリン類縁体と比較して異常に速い失活過程であることが分かりました。これはエネルギーギャップ則だけでは説明できないものであり、重要な失活かていが存在することが示唆されました。特に内部にNH部位を持たない二重N-フューズポルフィリンとの比較から励起状態におけるプロトン移動が失活過程ではないかと推測致しました。実際、内部の水素原子は強く水素結合されていることがNMRなどの結果から示唆されております。そこで、電子求引基を導入しイミン窒素の塩基性度を弱めることに致しましたところ、発光効率は約20倍向上致しました。
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Research Products
(4 results)