2007 Fiscal Year Annual Research Report
エリザベス朝の劇作家ヘンリー・チェトルの作品における政治・社会的側面
Project/Area Number |
07J55591
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本多 まりえ Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Henry Chettle / 政治的側面 / 社会的側面 / 印刷工 / 大衆文化 |
Research Abstract |
本研究課題は、エリザベス朝の劇作家ヘンリー・チェトル(Henry Chettle)の作品における政治的側面や社会的側面であり、チェトルの作品は、エリザベス朝の階級制度による不平等な社会を暗に批判するということを提示し、従来見過ごされてきたチェトルの作家としての特異性と重要性を論じることを目的とする。研究方法としては、チェトルの作品のみならず、当時の劇作品やパンフレット文献を基に、歴史的方法に従い考察する。 当該年度は、これまで研究してきたチェトルの作品における反乱・失脚・王位継承問題・軍事問題というテーマを再考し、研究を掘り下げると同時に、海賊・囚人というテーマに着手した。海賊に関しては、チェトルのHoffmanにおける海賊の問題を、当時実在した海賊の処刑を描いた同時代のパンフレットや劇作品を基に論じた。囚人に関しては、チェトルのHoffman、 Death of Robert, Earl of Huntington、 Sir Thomas Wyatt、 Sir Thomas Moreにおける囚人の表象を、Thomas SavileのThe Prisoners Conference、 Geoffrey MynshulのEssays and Characters of a Prison and Prisonersなど同時代のパンフレットを参照しながら論じた。以上の研究により、チェトルは当時の観客の関心事を劇に反映させたことが明らかになった。さらに、チェトルの劇作品に着手する以前の経歴について調べた所、チェトルはThomas Eastという印刷工に徒弟奉公をした後、John Danterという印刷工と共にシェイクスピアなどの本を出版する一方で、諷刺的なパンフレットや劇のト書きなどの断片を書くなど、当時の作家には珍しい経歴を持つことが分かり、チェトルが大衆文化に精通していた理由並びに彼の作家としての特異性が浮き彫りにされた。
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