Research Abstract |
研究代表者は,ルーメンプロトゾアがルーメンバクテリアの細胞壁ププチドグリカンに含まれる2,6-ジアミノピメリン酸(DAP)からリジンを合成することを発見し,プロトゾアのルーメン内生息の意義の一つを解明した。本研究では,ルーメンプロトゾアの一種Entodinium caudatumを用いて,DAP脱炭酸酵素(DDCase)が本当にプロトゾア自体のものかどうかを確認するため,DAP脱炭酸酵素をコードする遺伝子(lysA)をE.caudatumのcDNAライブラリーからスクリーニングし,その塩基配列を決定し,細菌のものと比較検討することを目的とする.平成9年度は,大腸菌のリジン要求株を用いて,リジンの代りにDAPを培地に添加した際に増殖するかどうかによりlysAをcDNAライブラリーからスクリーニングすることにして,これを繰り返し検討したが,結果は,いつもネガティブであった.また,平成8年度と同様にして,新調製したE.caudatumのcDNAライブラリーから5種類のバクテリアの既知のlysAのホモロジーの高い部分をプローブとしてジゴキシゲニン法でスクリーニングした際のポジティブプラークのインサート(約1.7kb)の塩基配列を最終的に決定した.その結果,これは,プラスミドの一部の塩基を除いた全長1609bpのインサートであり,明らかにポリ(A)テ-ルを含んでいた.また,プラスミドへのインサート結合時のリストリクションサイト(EcoRI,Xho I)やプローブの配列も確認された.しかし,このインサートにはORFが見られず,また,lysAとのホモロジーも見られなかった.このような経緯の中で,今年度は同時に,検討範囲を広げて,ルーメンプロトゾア体内のエンドシンビオントにも注目して,そのDNAを集め,上記のようにしてリジン要求株によるスクリーニングを行なうことにし,やや遅れ気味ではあるが,目下検討中である.次年度中には,lysAの細胞内の所在を確認し,その遺伝子を捉え,塩基配列を決定する予定である.
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