1996 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連邦諸共和国の労働資源、就業構造の変動と新労働市場形成に関する実証的研究
Project/Area Number |
08206208
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
保坂 哲郎 高知大学, 人文学部, 教授 (20036594)
|
Keywords | ソ連 / 人口統計 / 労働力 / 就業構造 |
Research Abstract |
今回の研究においては旧ソ連労働資源、就業構造の変動を分析しソ連邦経済の分解・崩壊にいたるプロセスを考え、各地域的特徴も考慮しながらソ連国勢調査の分析を行い、その成果を前年度の「旧ソ連邦人口センサスにおける就業構造について」に引き続き、「旧ソ連邦における就業構造の諸特徴」(高知論叢55号、1996年)でまとめた。また、ソ連の労働市場に関する理論的整理をブズガーリンやD.フィルツアーに関して行った。実証的研究の内容を概略的に要約すると、まず、中核的に着実に増加している部門は、「精神労働」では行政・党管理者、技師・技術者、医療従事者、科学者・教師、商業・食堂従事者、計画・計算従事者であり、70-80年代は特に管理層、事務職層の増加が一貫しており事務・管理層の「肥大化」がうかがわれる。「肉体労働」では機械製作・金属加工、自動車輸送、商業・食堂関係、保母・看護婦、計算機オペレーター、守衛・検査・倉庫係等である。通信、コンピューター化基盤を持たない「二極併存的」構造が見られる。多様な職種がどれだけお互いに緊密にネットワーク化ができているかが現代経済では重要な特徴になっているが、旧ソ連の場合「万遍ない」増加といった特徴がうかがえる。さらに「精神労働」就業者は総就業者増加率に関係なく着実に増加しており、総就業者増加率の変動に応じて増加率が変動しているのは「肉体労働」就業者になっている。就業者が大きく増加した場合には「雑役的」な就業増になる傾向が強く、就業者が減少した場合にも労働生産性上昇にむけた再編ができず、一律的増加率低減、あるいは減少といった形で変動している。「雑役者」的就業者比率が高く、徹底した減少傾向をとっていないこと、さらにそれをのぞいた「小項目集計就業者」においても「二極併存的」特徴が見られることの根拠には経済システム的原因、つまり企業内「労働資源貯蓄志向」を促進する経済システムがあり、また賃金系構造がある。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 保坂哲郎: "旧ソ連邦における就業構造の諸特徴" 高知論叢. 55号. 93-103 (1996)
-
[Publications] 保坂哲郎: "ブズガーリンのロシア経済論" 高知論叢. 56号. 139-146 (1996)
-
[Publications] 保坂哲郎: "D.フィルツァーの社会主義論" 高知論叢. 57号. 123-128 (1996)