1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08226235
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
春山 修身 東京理科大学, 理工学部, 講師 (60156528)
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Keywords | ガラス合金 / 可逆構造緩和 / 構造解析 / 放射光 / X線異常散乱 |
Research Abstract |
ガラス合金の構造緩和のうち可逆構造緩和(reversible structural relaxation)に関連した非晶質構造変化を調べた。今まで行われてきた実験室系でのX線散乱実験(Ordinary X-ray scattering)では各部分相関の寄与を平均的に見ているため構造緩和の際の微視的な構造変化まで立ち入って議論することが困難であった。今回、高エネルギー物理学研究所の放射光施設を利用してガラス合金を構成する特定元素のX線異常散乱実験を行い部分相関の変化をより詳しく調べることができた。可逆構造緩和に伴う構造変化をX線異常散乱実験から調べた報告はまだないようである。用いた試料は液体急冷法により作製したPd_<58>Ni_<25>Si_<17>および(Pt_<0.5>Ni_<0.5>)_<75>P_<25>ガラス合金である。前者はNi原子の、後者はPtおよびNi原子の異常散乱実験を行った。3元系ガラス合金の6個の部分相関の中で異常散乱実験により3個の部分相関のみを取り出すことが出来る。すなわち、Pd系では(Ni-Pd、Ni-Ni、Ni-Si)相関を、Pt系では(Pt-Pt、Pt-Ni、Pt-P:Pt原子の異常散乱)および(Ni-Ni、Ni-Pt、Ni-P:Ni原子の異常散乱)である。得られた結果を簡単に要約すると次の通りである。何れの場合も低温で長時間試料を焼鈍して化学的短範囲規則性を形成した試料では静的構造因子、動径分布関数ともにそれらの第一ピーク強度が、急冷したままの試料を前焼鈍して凍結自由体積を減少させた試料に比べて増加する。また、再度ガラス転移温度まで加熱して短範囲規則性を壊すとピーク強度は前焼鈍した状態に戻る傾向を示した。これらの変化は、単に焼鈍による原子間の距離の分布変化からでは説明が困難であり、現在これらの結果を説明しうる構造モデルを考慮中である。
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