1996 Fiscal Year Annual Research Report
炭素マイクロポーラス空間を利用した少数多体系の異常物性発現
Project/Area Number |
08230211
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
榎 敏明 東京工業大学, 理学部, 教授 (10113424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 博彦 東京工業大学, 理学部, 助手 (90262261)
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Keywords | 活性炭素繊維 / 熱処理 / ド-ピング / 吸着 / 炭素 / ホスト・ゲスト段 / 熱起電力 / 磁化率 |
Research Abstract |
1.熱処理による構造の規則化過程、その構造変化と電子構造との相関を調べるため、熱処理したACF、さらにこれらにヨウ素をドープしたACF-I_2の熱起電力、磁化率の挙動を解析した。ACFでは熱処理温度の増加に伴いFermiエネルギーの低下が見られた。これは、熱処理によりダングリングボンド数が減少し、σトラップされていたπ電子がπバンドに押し戻されたためと考えられる。また、同じ熱処理温度のACFにおいてもヨウ素ドープによりFermiエネルギーの増加が観測された。これはヨウ素がアクセプターとして働き、ACFからヨウ素へ電荷移動が生じたためと思われる。温度の一次に依存する熱起電力及び電気伝導度の金属的温度依存性から、熱処理温度1300℃以上のACF、ACF-I_2の熱起電力はホールキャリアの拡散によるものが支配的であるといえる。熱起電力の結果から、ACFでは電子散乱は乱雑な構造に起因するランダムポテンシャルに支配され、ACF-I_2においては電荷移動により生じた荷電不純物I_2^<δ->による散乱の寄与が新たに加わることが明らかとなった。 2.多孔的構造を持つACFに60Kで酸素を吸着させ、低温における吸着酸素の磁気的挙動から酸素分子の吸着状態に関する検討を行った。吸着量の少ない領域では磁化率はCurie-Weiss的挙動を示すが、吸着量の高い領域ではそれに加えて反強磁性的に短距離秩序化してゆく挙動が観測された。Curie-Weiss的挙動を示すスピンの数は酸素の吸着量の増加と共に減少する。このことは吸着量の増加に伴い反強磁性的クラスターが成長していることを示すが、ACFのポア構造を反映したランダムな構造をもつため最大の吸着量においてCurieスピンの寄与が残っている。
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