Research Abstract |
経済環境におけるメカニズム・デザインにおいては,私的財,公共財に関わりなく,パレート効率性,公平性などの社会目標の遂行に成功している.換言すれば,これらのメカニズム・デザインにおいては,私的財と公共財のどこが違うのかを明確にできないでいる.この一つの要因として,従来のメカニズム・デザインにおいては,各主体がメカニズムに参加することを暗黙のうちに想定しているいことに着目したのがSaijo-Yamato(1996)である.とりわけ,公共財の場合には,メカニズムに参加せずに他の主体が供給する公共財のベネフィトをフリー・ライドできる.Saijo-Yamatoはこの点を考慮に入れると,公共財の存在する経済においては分権的に社会目標を達成することができないという不可能性定理を提示している.上記の不可能性定理ゆえに,我々は,分権的な社会の制度をデザインするという手法を放棄せねばならないのだろうか.この問いかけに対する解答のひとつの手がかりがSaijo-Yamato-Yokotani-Cason(1997)の経済実験である.公共財の自発的支払メカニズムにおいて,メカニズムへの参加の自由を認めた実験を実施したところ,被験者たちは進化論的に安定的なナッシュ均衡に到達するよりもむしろ互いに協力したのである.さらには,この協力の源泉が被験者間の報復的な行為にあることも判明した.既存の協力に関する理論とは異なり,有限期間のうちに協力が創発(emerge)したのである. Saijo,T.,and T.Yamato,″′A Solution to the Free-Rider Problem′Twenty Years After,″mimeo.,October,1996. Saijo,T.,T.Yamato,K.Yokotani,and T.Cason,″Emergence of Cooperation,″mimeo.,January,1996.
|