1997 Fiscal Year Annual Research Report
ゲルの体積相転移の機構および静電相互作用の効果の解明
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08454184
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
前田 悠 九州大学, 理学部, 教授 (20022626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 茂男 九州大学, 理学部, 助手 (30225867)
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Keywords | ゲル / ゲルの体積相転移 / 熱測定 / 感熱性ゲル / N-イソプロピルアクリルアミドゲル / ゲルの水素イオン滴定 |
Research Abstract |
今年度は、N-イソプロピルアクリルアミドゲル(NIPA)にアクリル酸やスチレンスルフォン酸などの荷電基、アクリルアミドなどの親水基を導入した時の膨潤収縮の状態変化と状態エネルギー変化の対応関係を、本科研費で購入した示差熱量計(DSC)を用い、熱測定によって調べた。1)昇温による体積収縮が転移的である場合には、連続した2つの吸熱ピークが観測されるが、体積収縮が転移的でなく連続的であっても、ブロードではあるがはっきりとした吸熱ピークが観測された。これは体積収縮の駆動力である鎖の脱水和が、吸熱的であることによると考えられる。相転移領域の2つの吸熱ピークの1つは、相転移に由来し、他の1つは体積収縮に伴う脱水和によるものと考えられる。しかし、ピークは連続しており、わけて考えることが妥当かどうかは明らかではない。今後の研究課題である。これは、体積相転移が1次の相転移であるかどうかという興味深い問題である。2)荷電基を導入されたゲルでは温度上昇による体積収縮は連続的となるが、それに伴う吸熱量は減少することがわかった。これは、鎖の脱水和が体積収縮にも拘わらず抑えられているか、鎖の脱水和による吸熱が、なんらかの発熱過程により部分的に相殺されている、などの可能性が考えられる。後者の可能性としては、荷電基のいわゆるイオン水和がゲル収縮に伴い増加するあるいはより構造化が進むことが考えられる。これも今後の課題である。3)しかし、荷電を静電遮蔽する塩を添加すると、吸熱量は増大し、荷電基導入の熱的効果が消失することが明らかとなった。4)低いpH(=2)条件では、アクリル酸をモル比で10%も導入したNIPAゲルにおいても、体積相転移を示すことを新たに見出した。このゲルの熱的挙動は、転移温度が低い点を除いてNIPAゲルとほとんど同じであり、吸熱量もほとんど同じであった。このことは、未解離のアクリル酸の疎水性が、脱水和したNIPA鎖と同じ程度であることを示唆している。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] H.Maeda: "Effects of Ionic Strength on the Critical Micelle Concentration and the Surface Excesses of Dodecyldimethylamine Oxide" J.Phys.Chem.B. 101・38. 7378-7382 (1997)
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[Publications] Y.Terada: "Surface Energy of Ionized-Neutral Dodecyldimethylamine Oxide Micelles" J.Phys.Chem.B. 101・30. 5784-5788 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Volume Phase transition Behavior of NIPA Gels as a Function of the Chemical Potential of Water" Macromolecules. 30・6. 1847-1848 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effect of Introduced Electric Charge on the Volume Phase Transition of N-Isopropylacrylamide Gels" J.Phys.Chem.B. 101・21. 4184-4187 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effect of pH on the Volume Phase Transition of Copolymer Gel of N-isopropylacrylamide and Sodium Acrylate" J.Phys.Chem.B. 101・26. 5089-5093 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Effect of the Donnan osmotic pressure on the volume phase transition of hydrated gels," J.Chem.phys.107・3. 1028-1029 (1997)
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[Publications] K.Kaibara: "Dispersion behavior of oleic acid in aqueous media:from micelles to emulsions" Colloid & Polymer Sci.275・8. 777-783 (1997)
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[Publications] J.-S.Hong: "Viscosity of Aqueous Poly(N-vinylacetamide)Solutions in the Presence of Salts,Urea and Guanidine Hydrochloride" Colloid & Polymer.Sci.275・11. 1083-1087 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effects of the Gel Size on the Thermal Behavior of N-Isopropylacrylamide Gels in Relation to the Volume Phase Transition" Chem.Lett.723-724 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Effect of the hydrophobicity of chain on binding behavior of hydrophobic counterions to ionic gels" Langmuir. 13・23. 6135-6138 (1997)
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[Publications] 前田 悠: "高分子ゲルの構造と物性" ゲルテクノロジー(サイエンスフォーラム社). 191-203 (1997)
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[Publications] 前田 悠: "高分子溶液の散逸構造" 高分子. 46・9. 688-690 (1997)