1996 Fiscal Year Annual Research Report
[1.1]パラシクロファンの動力学的安定化とその化学特性研究
Project/Area Number |
08454192
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 孝 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20029482)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大北 雅一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60211786)
今井 敏郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80184802)
鈴木 孝紀 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202132)
|
Keywords | シクロファン / 歪み化合物 / 動力学的安定化 / 渡環相互作用 |
Research Abstract |
1.先に我々は、これまで未知であった[1.1]パラシクロファン(1)が対応するビス(Dewarベンゼン)誘導体(2)の光異性化によって生成することを、分光学的手段によって確認することに成功したが、1とその置換体はいずれも-20℃以下の溶液中でのみ安定に存在し、室温において単離し得るだけの安定性を持たない。計算機を利用した分子モデルの検討に基き、1のベンゼン環上に-CH_2SiMe_3, -CONMe_2等の基を導入すれば1が速度論的に安定化されると考えた。これらの基を導入した前駆体を合成し、その光異性化による[1.1]パラシクロファンの生成を行ったところ速度論的安定性の著しい上昇が認められ、50℃の溶液中に長時間加熱しても減少しないまでになった。 2. 2の光異性化による1の生成では、1と共にその二次光反応生成物である分子内渡環付加物(3)が副生し、反応の極く初期を除けば3が主生成物となる。したがって、1の速度論的安定化だけではその単離は困難であったが、3は温和な条件下に熱反応によって定量的に1に変換されることを見い出した。3は容易に単離されその熱異性化を利用した1の単離精製を進めている。 3.3はベンゼンのp, p-二量体構造をもつ化合物である。無色結晶として単離された3のX線構造解析を行った結果、理論的に予測されていたthrough-bond相互作用による結合の顕著な延伸が確認された。 4.理論計算によって1とそのイオン種の構造および芳香族性に検討を加えた。その結果、1のジカチオン種では、2つのベンゼン環の面間隔の著しい減少と2つのベンゼン環に渡る電子の非局在化による新規な芳香族性の発現が示唆されたが、ジアニオン種では対照的に芳香族性の消失が示唆された。これらの予測を実験によって確かめるべく研究を進めている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Masakazu Ohkita: "Direct Synthesis of 2-Norbornanone Dithioactals from 2-Cyclopentenone Dithioacetals and Dienophiles" Tetrahedron. 52・30. 9979-9990 (1996)
-
[Publications] Masahiro Okuyama: "Kinetically Stabilized [4] Paracyclophane-1, 4-Bis (dicyanomethylene)-2-ene Derivative : ^1H-NMR Measurement" Angewandte Chemie Int.Ed.Engl.36(印刷中). (1997)
-
[Publications] Takanori Suzuki: "Hexaphenylethane Derivatives Exhibiting Novel Electrochromic Behavior" Angewandte Chemie Int.Ed.Engl.36(印刷中). (1997)