1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08456093
|
Research Institution | Ocean Research Institute, The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木暮 一裕 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 裕昭 熊本県立大学, 生活科学部, 助教授 (50197737)
|
Keywords | イトゴカイ / イオウ化合物 / 有機物代謝 / イオウ細菌 / 環境浄化 / 底質 |
Research Abstract |
イトゴカイはヘドロ化した底質に生息する数少ない多毛類で、有機物分解を促進し、硫化物の蓄積を阻んで環境悪化を抑制することが知られる。本研究はこの具体的なメカニズムを明らかにする目的で、主要に以下の2点について検討した。 1.イオウ細菌の検出 イトゴカイにはイオウ細菌が付着あるいは共生し、還元型のイオウ化合物を酸化することによって硫化物の蓄積を防ぐとともに有機物を固定してイトゴカイに供給している可能性がある。分子遺伝学的方法により、イトゴカイの体内あるいは体表に真正細菌の存在が認められた。ビデオ観察により、環境中のイオウ細菌が摂食され、検出されていることが示唆されたため、イトゴカイ周囲の泥中のイオウ細菌を培養法によって追跡したところ、pH7.0で培養可能なイオウ細菌が減少するのが認められた。 3:2.イトゴカイの有機物代謝様式 イトゴカイは底泥に巣穴を作り、そこから出入りするとともに摂食、糞の排出などを行ってその周囲の環境に物理化学的な影響を及ぼす。こうした作用が好気性微生物の活動に及ぼす影響を確かめるため、テトラゾリウム化合物(INT)を用いた新たな解析法を確立した。これにより、イトゴカイの活動が酸素を含む海水を底泥に導入し、好気性細菌の活動を活発化させて好気的有機物分解過程を促進することが初めて定量化された。なお、今回新たに開発された方法は堆積物中の他の生物にも適用が可能で、今後多方面の研究に適用が期待される。
|