1996 Fiscal Year Annual Research Report
躁うつ病の病体形成における脳内インターロイキン-1の役割
Project/Area Number |
08457252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
神庭 重信 山梨医科大学, 医学部, 教授 (50195187)
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Keywords | ストレス / インターロイキン-1 / インターロイキン-1受容体アンタゴニスト / 視床下部 / HPA系 |
Research Abstract |
RT-PCR法にて、ラット脳内でのインターロイキン-1β(IL-1β)およびインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)mRNAを定量する方法を確立した。この方法を用いて、IL-1RaおよびIL-1βmRNAの量の拘束ストレスに対する変化を、ラット視床下部、海馬、前頭皮質、脳幹、小脳において調べた。調べたすべての脳部位でIL-1βおよびIL-1RaのmRNAとも、拘束開始後増加した。IL-1βmRNAのピークは拘束開始後約30分で、IL-1RamRNAは約2-4時間後だった。IL-1RamRNAは12時間後も有意な増加を続けていた。1βmRNAの12〜72倍に対しIL-1RamRNAは74〜467倍であった。これらのことから、拘束ストレスによって誘導されたIL-1Raが蓄積し、特にIL-1βの産生がピークを過ぎた後に抑制作用を発揮することにより、IL-1の効果終了を速める可能性が考えられる。以上より、ストレスによってその活性が上昇することが知られていたラット脳内IL-1に対し、それを抑制するメカニズムが存在することが示唆された。拘束ストレスによって、主に視床下部と海馬にIL-1Ra遺伝子の発現が誘導された。視床下部のIL-1が、視床下部-下垂体-副腎系(以下HPAaxisと略す)の活動性を亢進することは一連の研究で証明されている。したがって、ストレスによって誘導されたIL-1RaがHPAaxisの活動性に抑制的に関与している可能性が示唆された。また、ストレスによってもたらされる発熱・食欲低下・痛み閾値の低下には、IL-1が関与していることが知られている。ストレスによるIL-1Raの産生は、これらを抑制する生体反応かもしれない。
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