1996 Fiscal Year Annual Research Report
不定胚をモデルとする種子乾燥耐性誘導の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
08459003
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鎌田 博 筑波大学, 生物科学系, 教授 (00169608)
|
Keywords | ニンジン / 不定胚 / 種子胚 / アブシジン酸 / 細胞内情報伝達 / C-ABI3遺伝子 / 乾燥耐性 / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
種子における乾燥耐性誘導には母植物から供給されるアブシジン酸(ABA)が重要な役割を演じており、その際にはABI3タンパク質がABAの細胞内情報伝達の重要な仲介タンパク質として機能することがシロイヌナズナを用いて推測されてきた。しかし、材料の問題もあり、この過程の分子機構についてはほとんど研究が進んでいない。そこで、発達段階が揃った胚を大量に供給できるニンジン不定胚を用い、この分子機構について研究を進めた。まず始めに、ニンジン種子中における内生ABA含量の変動を種子の乾燥との関係で検討し、ニンジンにおいても種子が乾燥を始める直前に一時的にABA含量が増加することが確認された。次に、PCR法を用いてニンジン不定胚のcDNAライブラリーからシロイヌナズナのABI3遺伝子のホモローグ(C-ABI3)を単離することに成功し、さらに、このC-ABI3遺伝子の発現状況をノーザン法で検討した。その結果、C-ABI3遺伝子は、良く発達した成熟不定胚はもちろんのこと、極く初期の若い不定胚ばかりでなく、不定胚の形態を分化させていない不定胚形成能を持つ細胞(EC)においても発現していた。さらに、ニンジン種子においても、内生ABA含量が増加する以前にその発現が認められ、種子乾燥耐性におけるABAの重要性とともに、その細胞内情報伝達におけるC-ABI3の重要性が強く示唆された。一方、魚雷型不定胚をABAで処理した場合と処理していない場合について、ディファレンシャルスクリーニングを行い、ニンジン不定胚のABAによる乾燥耐性誘導時に発現する遺伝子のクローニングを行った結果、全く新たに発現する遺伝子1種類と、発現量が増加する6種類の遺伝子を単離することに成功した。次年度以降は、このABA誘導型遺伝子の発現に対するC-ABI3遺伝子産物を介したABAの関与を詳細に検討する予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] H.Yang: "Arabidopsis thaliana ECP63 encoding a LEA protein is located in chromosome 4." Gene. 184. 83-88 (1997)
-
[Publications] H.Yang: "Late embryogenesis abundant protein in Arabidopsis thaliana homologous to carrot ECP31." Physiologia Plantarum. 98. 661-666 (1996)
-
[Publications] 鎌田 博: "体細胞不定胚形成に関する生理学的・分子生物学的研究" 植物の化学調節. 31. 1-11 (1996)