1998 Fiscal Year Annual Research Report
不定胚をモデルとする種子乾燥耐性誘導の分子機構に関する研究
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08459003
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Research Institution | Institute of Biological Sciences, University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鎌田 博 筑波大学, 生物科学系, 教授 (00169608)
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Keywords | ニンジン / シロイヌナズナ / 不定胚 / 種子胚 / アブシジン酸 / 乾燥耐性 / 細胞内情報伝達 / 遺伝子発現調節 |
Research Abstract |
種子乾燥耐性獲得においては母植物から供給されるアブシジン酸(ABA)が重要な役割を演じており、ABI3/VPlタンパク質がABAの細胞内情報伝達の重要な仲介因子として機能することがシロイヌナズナやトウモロコシにおいて推測されてきた。しかし、材料供給の問題から、この過程の分子機構についてはほとんど研究されていない。そこで、発達段階がそろった胚を大量に供給できるニンジン不定胚を用いて研究を進めた。本年度は、胚特異的かつABA誘導的に発現するニンジンおよびシロイヌナズナのECP遺伝子についてそのプロモーター領域を単離し、デリーションクローンを用いてシス配列の決定を試みたその結果、4種類のECP遺伝子のいずれにおいても、ABA誘導遺伝子に見られるシス配列(ACGTをコアとするABA-responsive element:ABRE)の存在が明らかとなった。そこで、このABREを含む領域にC-ABI3タンパク質が結合するか否かを調べたが、直接的結合は見られなかった。一方、C-ABI3遺伝子を過剰発現させた植物個体の葉や培養細胞(NC)では、ABA処理によってこのようなECP遺伝子の発現が見られ、確かにC-ABI3タンパク質がABA誘導的な遺伝子発現に関与することは明らかであり、また、形質転換NCはABA処理によって弱いながらも明確な乾燥耐性を獲得した。このような結果を総合的に判断すると、C-ABI3タンパク質は他の分子を介してECP遺伝子のプロモーターに結合してABAの情報を伝え、ECP遺伝子の発現が引き起こされた結果として種子における乾燥耐性が誘導されることが示された。ところで、C-ABI3遺伝子の発現は胚特異的であるが、ストレス処理によっても発現することが新たに判明し、ストレス処理によって不定胚誘導が起こる理由の1つがこの点にあることも明らかとなった。そこで、C-ABI3およびABI3遺伝子のプロモーターを単離・解析し、ほぼ共通なシス配列の存在が明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Higashi: "Pattems of expression of glutamine synthetase isoformes during somatic and zygotic embryogenesis in carrot." Plant and Cell Physiology. 39. 418-422 (1998)
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[Publications] Y.Tachikawa: "Changes in protein pattem during stress-induction of carrot (Daucus Carota L.) somatic embryogenesis." Plant Biotechnology. 15. 17-22 (1998)
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[Publications] H.Shiota: "C-ABI3, the carrot homologue of the Aradibopsis ABI3 gene, is expressed during both zygotic and somatic embryogenesis and functions in the regulation of embryo-specific ABA-inducible genes." Plant and Cell Physiology. 39. 1184-1193 (1998)
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[Publications] K.Higashi: "Inhibitory conditioning for carrot somatic embryogenesis in high cell density cultures." Plant Cell Reports. 18. 2-6 (1998)
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[Publications] K.Sasaki: "Detection of glycoproteins in carrot somatic embryos induced by 2,4-D or stress treatment." Plant Biotechnology. 15. 241-243 (1998)
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[Publications] H.Shiota: "Successful long-term preservation of abscisic acid-treated and desiccated carrot somatic embryos." Plant Cell Reports. (in press). (1999)