1996 Fiscal Year Annual Research Report
西洋・非西洋社会における「近代」の検証と近代化の普遍的条件に関する思想文化的研究
Project/Area Number |
08459021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岩岡 中正 熊本大学, 法学部, 教授 (70136711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
首藤 基澄 熊本大学, 教養部, 教授 (20040496)
吉川 榮一 熊本大学, 文学部, 助教授 (50191549)
谷川 二郎 熊本大学, 文学部, 教授 (20040488)
中村 直美 熊本大学, 法学部, 教授 (60039980)
中山 将 熊本大学, 文学部, 教授 (70092335)
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Keywords | 近代 / 近代化論 / 人間 / 価値 / 社会 / 自我 / アイデンティティ / 人権 |
Research Abstract |
今年度は研究発表会を3回のほか、取りまとめ作業のためのワーキング・グループ会合を9回行った。初年度予定の作業のうち、1-(イ)基本文献収集はほぼ終わり、(ロ)近代化研究の到達点の把握と、2-各分担者の研究を併せて、各小グループより次ぎのような発表がなされた(1-96.6.28 2-96.10.15 3-97.1.24)。 1、小松 裕「近代化の一般理論と非西洋後発国の近代化をめぐって-富永健一の研究を手がかりに」は、初回でもあるので共通テーマに関する基本的知識の提供をもかね、(1)日本と西洋における近代化論の歴史を概観したのち、(2)富永の方法批判に及んだ。東西の所論に見るかぎり、近代化の定義は各人各様でその当否を問うても無意味であること、近代化の要素を列挙しても決定的要因を捉え得ないこと、日本の経験は後発国にとって過程モデルにならないことが結論づけられ、今後の研究方法に重要な示唆となった。 2、伊藤洋典「アレントにおけるモダンとポストモダン」は、アレントの所論のポストモダン的解釈は彼女の共同性固執を隠蔽するゆえに限界があるとした上で、彼女が意図した近代の意味としての世界疎外からの個の意味の救出は、徹底した個体化の原理を探ることを通じて共同性への回路を見出す試みであるとする。 3、篠崎 栄「自由主義的個人主義から地球全体主義へ」は、すでに行き詰まりを見せている財の私有と他者危害排除の原則に立つ人間中心主義を克服する道を、地球環境を公共財とし、未来世代への責任を負うことによってエゴイズムを脱却するところに見出そうとする。なお、今年度はさらに3月24日に、谷川二郎「シェイクスピアに見る近代の諸相」の発表を予定している。また、4月中に小グループ毎のまとめを行うことにしている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 岩岡,中正: "個性と共同性-思想史からのアプローチ" 『現代の地域と政策』(熊本大学「地域」研究I)所収. 九大出版. (1997)
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[Publications] 岡部,勉: "近代化と人間性の概念-私は何であるか" 『国際社会の近代と現代』(熊本大学「地域」研究III)所収. 九大出版. (1997)
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[Publications] 篠崎,榮: "人権概念の由来と論拠" 『国際社会の近代と現代』(熊本大学「地域」研究III)所収. 九大出版. (1997)
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[Publications] 中村,直美: "侵害原理,モラリズム,パタ-ナリズムと自律" 『三島淑臣教授退官記念論集』(仮題)所収. 九大出版. (1997)
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[Publications] 伊藤,洋典: "パトリオティズムのゆくえ" 『法政研究』(九州大学). 63巻3・4号. (1997)
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[Publications] 上利,政彦: "英語の語彙にみる近代化の様相" 『国際社会の近代と現代』(熊本大学「地域」研究III)所収. 九大出版. (1997)
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[Publications] 上利,政彦: "Formura, Rhetoric and the Word" Berne : Peter Lang, 136 (1996)
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[Publications] 首藤,基澄: "福永武彦・魂の音楽" おうふう, 334 (1996)