1997 Fiscal Year Annual Research Report
西洋・非西洋社会における「近代」の検証と近代化の普遍的条件に関する思想文化的研究
Project/Area Number |
08459021
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岩岡 中正 熊本大学, 法学部, 教授 (70136711)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
首藤 基澄 熊本大学, 文学部, 教授 (20040496)
吉川 榮一 熊本大学, 文学部, 助教授 (50191549)
谷川 二郎 熊本大学, 文学部, 教授 (20040488)
中村 直美 熊本大学, 法学部, 教授 (60039980)
中山 將 熊本大学, 文学部, 教授 (70092335)
|
Keywords | 近代 / 近代化論 / 人間 / 価値 / 社会 / 自我 / アイデンティティ / 人権 |
Research Abstract |
今年度は研究発表会を9回行った。前年度の4回を加えると13名全員が発表したことになる。 1、基礎論-(1)岩岡中正「普遍・解体・再生-近代と近代後をめぐる覚書」(97.6.6)。近代的普遍が形成と解体を閲し、さらに近代化の集約点たる水俣をめぐる思想に再生を見る。(2)岡部 勉「反自然主義-固体の意味について-」(9.19)。近代化の過程において、「私」の把握の基盤がこころから活動、自然から反自然へと移行したことを跡づける。(3)中山 將「共通感覚と共同性」(12.12)。近代の主観主義的人間観が、近代後への射程をもつ視点を用意していたことをカントに見出す。(4)中村直美「自律論の検討」(98.26)。普遍的な価値としての自律の概念をカント以降の諸説で検討し、さらに現代社会の諸領域における有効射程を探る。 2、地域論-(1)上利政彦「綴字にみる近代化への様相-イングランド1553年」(97.11)。英語がフランス語文化の影響から自立する際の揺れを、修辞学書で検証する。(2)大野龍浩「英語近代化の陰-社会問題小説に見る労働者階級-」(98.1.30)。19世紀前半の社会状況を描く3篇の作品に、当時の労働者の劣悪な境遇を探る。(3)里見繁美「商業的民主主義の邁進-アメリカ近代とThe American Scenne-」(2.20)。アメリカ的近代がもたらしたものを、観念から事実への転換という視点から点検する。(4)吉川榮一「中国の『自我』の解放-抑圧が『近代』をうみだすのか?」(97.10.17)。中国の文学は政治と人民の視点からの表現が伝統であり、人間の再発現は文革後の一時期のみであったことを、詩の潮流に見る。(5)首藤基澄「芥川龍之介『羅生門』の新解釈」(98.3.16)。漱石とR.ローランの影響下に形成された作者の″日本的近代人の魂″観、「仕方がない」生の思想の造形を主人公に見出す。 以上の発表とその際の討議を基に、普遍化可能な要素を考察し、2年間の研究成果をまとめる。
|
Research Products
(11 results)
-
[Publications] 岩岡,中正: "普遍・解体・再生一近代と近代後をめぐる覚え書-" 科学研究費 研究成果報告書(平成10年3月刊). (発表予定). (1998)
-
[Publications] 中山,將: "共通感覚と共同性" 文学部論叢(人間科学篇)熊本大学文学会. 58号. 19-35 (1998)
-
[Publications] 岡部,勉: "反自然主義-固体の意味(あるいは生きることの意味)について-" 文学部論叢(人間科学篇)熊本大学文学会. 58号. 37-60 (1998)
-
[Publications] 中村,直美: "自律論の検討" 科学研究費 研究成果報告書(平成10年3月刊). (発表予定). (1998)
-
[Publications] 伊藤,洋典: "「故郷喪失」時代における政治的共同性" 科学研究費 研究成果報告書(平成10年3月刊). (発表予定). (1998)
-
[Publications] 谷川,二郎: "シェイクスピアに見る英国近代の萌芽" 科学研究費 研究成果報告書(平成10年3月刊). (発表予定). (1998)
-
[Publications] 里見,繁美: "新認識の美学-″The Alter of the Dead″論-" 九州アメリカ文学. 38号. 65-73 (1997)
-
[Publications] 吉川,榮一: "葵元培と中国民権保証同盟" 文学部論叢(人間科学篇)熊本大学文学部. 59号. 1-19 (1998)
-
[Publications] 首藤,基澄: "芥川龍之介の出発-ロマン・ロランの影響-" キリスト教文学研究. 15号(発表予定). (1998)
-
[Publications] 大野,龍浩 訳: "エリザベス・ギャスケル作『シルヴィアの恋人たち』" 彩流社, 737 (1997)
-
[Publications] 小松,裕: "日本史のエッセンス(共著)" 有斐閣, 402(236-245,259-271) (1997)