1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトレトロウイルスの病原性の解析と治療に関する研究
Project/Area Number |
08557019
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉木 敬 北海道大学, 医学部, 教授 (60220612)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 仁 北海道大学, 医学部, 助手 (20232192)
脇坂 明美 北海道大学, 医学部, 助教授 (90113646)
|
Keywords | HTLV-I / 疾患モデル / トランスジェニックラット / アポトーシス |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は成人T細胞白血病(ATL)のみならず神経疾患(HAM)、関節炎(HAAP)、眼疾患(HAU)、シェ-グレン症候群等の発症にも関与することが明らかとなってきている。本研究はモデル動物を用いて以下の結果を得た。 1)HTLV-I感染ラットはHAM/TSP類似脊髄症を発症する(HAMラット)。この動物の脊髄ミクログリア/マクロファージ系細胞にはHTLV-Iが感染していた。この動物の脱髄は発症約6か月前の潜伏期間中から出現するオリゴデンドロサイトのアポトーシスによるが、その出現時期に一致してpX遺伝子、TNF-αの発現とbcl-2の一過性の発現抑制を見た。 2)LTR-env-pXトランスジェニックラットは多彩なcollagen vascular diseaseを発症する。この動物のの末梢T細胞は種々の刺激に対し高反応性であった。またその表面には発症前に既にCD80/86やICAM-1など活性化の指標となる分子が発現していた。炎症局所の浸潤T細胞についてTCRVβ mRNAのRT-PCR-SSCPで検索しオリゴクローナルであったが、異なる個体では必ずしも共通してはいなかった。env-pXトランスジェニックラットと正常ラット間での骨髄や脾細胞移入実験では、疾患によりリンパ球、標的組織あるいは胸腺などリンパ球の成熟に関わる組織のいずれの組織での導入pXの発現が重要かは異なり、少なくとも3通り発症機構が関与した異なる疾患が存在することが示唆された。 3)新たにT細胞特異的プロモーターを結合したpX発現トランスジェニックラット(lck promoter-env-pXラット)を作製し、胸腺腫の発症を見た。 以上、本研究ではモデル動物の開発とHTLV-I病原性の機序解明には進展を見たが、これらの疾患の治療実験にまでは至らなかった。
|
-
[Publications] Yamazaki,H.: "A wide spectrum of collagen vascular and autoimmune diseases in transgenic rats carrying the env-pX gene of human T lymphocyte virus type I." Int.Immunol.9. 339-346 (1997)
-
[Publications] Murata,K.: "In vivo retrovirus-mediated herpes simplex virus thymidine Kinase gene therapy approach for adult T cell leukemia in a rat model." Jpn.J.Cancer Res.88. 492-500 (1997)
-
[Publications] Shikishima,H.: "HTLV-I pX transgenic rats: development of cytokine-producing mammary carcinomas and establishment of the pX mammary carcinoma cell lines." Leukemia.11. 70-72 (1997)
-
[Publications] Yoshiki,T.: "Models of HTLV-I-induced diseases.Infectious transmission of HTLV-I in inbred rats and HTLV-I env-pX transgenic rats." Leukemia. 11. 245-246 (1997)
-
[Publications] Ohya,O.: "HTLV-I induced myeloneuropathy in WKAH rats: Apoptosis and local activation of the HTLV-I pX and TNF-α genes implicated in the pathogenesis." Leukemia. 11. 255-257 (1997)
-
[Publications] 吉木 敬: "ヒトレトロウイルス感染症の病理" 日本病理学会会誌. 86・2. 21-45 (1997)