1996 Fiscal Year Annual Research Report
世紀転換期ウィーンにおける装飾とセクシュアリティー-性とその表象に関する思想史的研究-
Project/Area Number |
08610043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 純 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10251331)
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Keywords | 装飾 / セクシュアリティー / 美術史 / 建築史 / 近代 |
Research Abstract |
今年度は、まず本研究の基礎となる資料の収集につとめるとともに、絵画や建築などのイメージ分析に用いるため、これらの資料から画像をデータベース化した。この画像データは東京大学教養学部における教育活動(「総合科目・空間芸術論」)においても活用された。資料、データベースをもとにしておこなった具体的な研究内容は次の通り。 1.世紀転換期ウィーンの芸術(文学・美術・建築など)における<装飾>および<セクシュアリティー>の表現をアドルフ・ロースやオット-・ヴァーグナ-といった建築家の作品に即して分析し、その特徴を検討した。あわせてこれらの建築家自らが理論化した言説において、<装飾>や<セクシュアリティー>という主題がどのように扱われているかを考究した。さらに生紀転換期のこの<装飾>および<セクシュアリティー>をめぐる芸術表象や言説を、ワイマ-ル・ドイツの芸術家たち(特に建築家ブルーノ・タウトやミ-ス・ファン・デル・ロ-エなど)のそれと比較対照した。 2.<装飾>が美術史研究の対象として構成される論理を、『装飾様式論』をはじめとする美術史家アロイス・リ-グルのテキストのうちにたどり、その独自性をそれまでの美学における<装飾>の理論的位置づけとの比較のうちにとらえることを試みた。さらにリ-グルによる美術史学の基礎づけに対してこの<装飾>という主題がどのように関係し、寄与したかを、『末期ローマの芸術産業』以後のリ-グルの業績を視野に収めつつ分析した。
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[Publications] 田中 純: "性差の建築ーダンディ、モード、モダン" イマーゴ. 7-6. 100-115 (1996)
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[Publications] 田中 純: "夢のトポロジーパサージュの襞" 建築文化. 595. 100-105 (1996)
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[Publications] 田中 純: "<光の皮膚>の肌理-都市写真という寓意" 10+1. 5. 16-27 (1996)
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[Publications] 田中 純: "<無人>の風景-建築が見る<不眠の夢>" 10+1. 6. 46-60 (1996)
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[Publications] 田中 純: "近代というナルシス-ル・コルビュジエの遡行的問い" 建築文化. 600. 68-73 (1996)
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[Publications] 田中 純: "芸術意欲から歴史の論理へ-もう一つのウィーン学派" 建築雑誌. 1396. 28-29 (1996)
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[Publications] 田中 純: "磯崎新の革命遊戯" TOTO出版, 326 (1996)