1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610052
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岡田 温司 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (50177044)
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Keywords | 自画像 / 肖像 / 人相学 / 鏡 / 主体 |
Research Abstract |
三年目にあたる今年度はおもに、西洋のルネサンスから現代までの自画像の問題を中心に研究が進められた。従来、自画像は、それを描いた作者の伝記的なアプローチや、西洋における近代主義的な「自我」や「主体」の形成という観点から論じられることがほとんどであったが、そういった固定した概念をむしろ反省的に問い直すことが、本年度の研究の主眼となった。具体的には、自画像を描くときに画家がほとんどの場合用いる鏡ないし鏡像をめぐる問題、ラカンの「鏡像段階」という理論に象徴されるような「主体」の形成にかかわる精神分析の考え方、人称をめぐる言語理論等が、新しい自画像研究の視点として採用された。また、自画像を描いている自分自身を描くという、制作のシナリオを提示しているメタ絵画的な自画像の構造もまた分析された。さらにジェンダー論の視点から、女性の自画像についても考察された。 対象となったのは、具体的に、十五世紀のイタリアおよびフランドルの絵画から、十六世紀のデューラー、ティツィアーノ、パルミジャニーノ、バロック時代のカラヴァッジョ、アンニバレ・カッラッチ、アルテミシア・ジェンティレスキ、レンブラント、プッサン、フェルメール、近代・現代では、クールベ、ダヴィッド、マネ、ドガ等々である。その成果の一端は、1998年10月に京都大学で開催された美学会の全国大会において「自画像という〈病〉」という表題で口頭発表され、さらにこの美学会全国大会のテーマ別研究報告書『美学・芸術学の今日的課題-日本における美学・芸術学の歩みと課題+〈病〉の感性論-』に掲載された。
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[Publications] 岡田温司: "だが君、それをどう我々の意味にあてはめるつもりかね" 美術史. 144. 182-197 (1998)
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[Publications] 岡田温司: "美術館との対話-美術史学" 現代美術館学(昭和堂). 238-245 (1998)
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[Publications] 岡田温司: "ルネサンスの遠近法" 視覚と近代 大林・山中編(名大出版). 21-57 (1999)
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[Publications] 岡田温司: "自画像という〈病〉" 美学・芸術学の今日的課題. (1999)
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[Publications] ロベルト・ロンギ: "芸術論叢I-アッシジから未来派まで-" 岡田温司監訳、中央公論美術出版, 412 (1998)