1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa Women's Junior College |
Principal Investigator |
木間 英子 昭和女子大学短期大学部, 講師 (90132133)
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Keywords | 音楽聴 / 音楽美学 / 音楽社会学 / メルスマン / アドルノ / エネルギー説 / 日常性 |
Research Abstract |
現代における音楽聴取のあり方を「音楽聴」の再検討を通して考察しようとするのが本研究の最終的な目的であるが、今年度は、次の二点についての考察を行なった。 1.H.メルスマンの音楽聴取論 近代の藝術観に適合する音楽の聴取を意図する「音楽聴」の概念を「現代の聴取」として再検討するための導入として、現代の音楽美学思想との関連の中でこの概念がどのような影響を受けどのような方法によって具体化されていくのかを、今世紀前半の音楽美学思想を代表するエネルギー説に基づいたメルスマンの音楽聴取論を通して考察した。彼の著作『音楽聴』『応用音楽美学』『音楽通論』に依拠しながら、音もつ諸要素のエネルギーの緊張関係を分析するという方法によって作品のフォルムの理解に至るというメルスマンの音楽聴の内容を明らかにした。 2.Th.アドルノの音楽聴取論 アドルノの特色は、美学的観点を土台に現代社会における音楽状況を社会学的観点からの分析を通して音楽聴取を論じていることである。音楽と社会構造とを関連づけて聴衆のタイプ分けを試みた論文「音楽に対する態度の類型」を手がかりに現代における聴衆の考察に有効なパラダイムについて検討した。聴取様態の分析にはこれまでの音楽聴を頂点とする聴体験の層構造が現代においても適用せきること、現代の多様性に応ずる音楽聴取の分析には社会学的な視点が必要であるが、時代や地域などの個別の条件を超越する普遍的な概念として「日常性」の音楽が重要であることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)