1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610059
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
木間 英子 昭和女子大学短期大学部, 講師 (90132133)
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Keywords | 音楽聴 / 構造 / 理解 / 音楽美学 / 民族音楽 |
Research Abstract |
昨年度行った、エネルギー説からの音楽聴論および社会学的観点からの聴衆論に対する検討結果を踏まえて、「音楽聴」の現代的要請について音楽美学の立場から考察を行った。その要点は以下の3点である。 1.現代の新たな聴取様態の特徴を「気楽な聴取」「任意の反応」と捉え、それらは、日常的な音楽の聴取に限られること、それも極度の主観性によってなされることから、限定された聴取でしかないことを指摘した。多様化する音楽状況に対応できるのは、多様な音楽に即して聴くことのできる柔軟な聴き方である。それは音楽聴によってなされのではないかという考察の方向性を示した。 2.音楽聴は、自律音楽美学が主張してきた音楽聴取である。ハンスリックの美的把握、リーマン、ベッセラ-、メルスマンの解釈に共通するのは音楽の構造の理解を前提とする聴取であるという点であることをそれぞれの見解の再検討を通して見いだした。 3.音楽聴は、これまでもっぱら西洋近代の藝術観に基づく藝術音楽だけを対象としてきたが、構造をもつ音楽は藝術音楽だけに限定されない。民族音楽にはそれぞれに固有の構造をもつものが多いが、これまで構造の理解とともに聴かれることはまれであった。民族音楽にも音楽聴が必要であることを指摘し、構造把握の実例として、日本の能の囃子事のシェ-マの分析を行った。分析の結果、日本音楽は西洋音楽のそれとる音楽構造であり、その構造を把握しない限り日本音楽の固有のあり方を聴き取ることはできないことが明らかになった。このことから、音楽に即した理解を前提する音楽聴は、多様な音楽状況の中で主観的な聴き方に偏りがちな現代にあってこそ要請される聴き方であることを結論とした。
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Research Products
(2 results)