1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610061
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Research Institution | Toyama University |
Principal Investigator |
鼓 みどり 富山大学, 教育学部, 助教授 (40272885)
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Keywords | ユトレヒト詩篇 / 写本挿絵 / カロリング朝美術 / 9世紀 / 説明的風景表面 / オデュッセウス風景画 / ウェルギリウス・ヴァティカヌス / パリ、ラテン語8846番 |
Research Abstract |
今年度は前年度に収集した資料を整理と分析に入った。土坡や雲、水など、モティーフを切ったり繋いだりする要素の働きを分析した。また物語を組み込んだ風景表現を、ポンペイの壁画やオデュッセウス風景画、『ウェルギリウス・ヴァティカヌス』、『アッシュバ-ナム五大書』などの古代及び初期キリスト教美術に探り、一歩踏み込んだ比較検討を行った。作業の効率化を図るために、テクスチュアルな詩篇の章句と挿絵モティーフ一覧など、蓄積されたアナログ・データの電子化に着手した。写真資料のカード化と並行してスキャナやフォトCDの活用にも努めた。その結果、挿絵を組み立てている景観は、トポグラフィックな表象であると同時に、場面を組み込む「入れ物」の働きも担っていることが明らかになった。また古代末期の物語を宿した風景表現とユトレヒト詩篇挿絵は、情景を遠くから捉えることによって物語をあえて曖昧にする手法が共通している。ユトレヒト詩篇のこうした挿絵の構造は、古代から継承されたものと言うよりは、挿絵の特性を引き出すために選択されたものと考えたい。 1996年に見学した「ユトレヒト詩篇展」に研究の現況を再確認し、1997年の論評にまとめた。また最後のコピーであるパリ、ラテン語8846番後半部挿絵(14世紀)について、画面の構造と主題選択を論考した。そしてユトレヒト詩篇とは一見遠く隔たった部分に、場面を配列する装置という本質的な接点があることを確認した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 鼓みどり: "「展覧会評:ユトレヒト詩篇展(ユトレヒト、Museum Catherijneconvent,1996年8月31日〜11月17日)について」" 日仏美術学会会報. 16. 39-43 (1997)
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[Publications] 鼓みどり: "「テクスチュアルな詩篇挿絵の変容:パリ、ラテン語8846番詩篇 後半部の挿絵について」" 富山大学教育学部紀要. 51. 1-14 (1997)
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[Publications] 鼓みどり(辻佐保子): "美術史の軌跡と波紋" 中央公論美術出版, 448 (1996)
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[Publications] 鼓みどり(共著): "世界美術大全集7西欧初期中世の美術" 小学館, 470 (1997)