1996 Fiscal Year Annual Research Report
親による子どもの感情認知と親子の相互作用の検討-I FEEL PICTURE TESTを用いて-
Project/Area Number |
08610105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 一子 筑波大学, 心理学系, 講師 (40206264)
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Keywords | I feel picture test / emotional responsibility / cognition of facial expression / mother-child interaction |
Research Abstract |
〈目的〉Emde(1988)は、母親が子どものシグナルに敏感で適切に反応する能力を感情応答性とし、母子間の相互作用を一層促進するものであると指摘した。母親が感情を適切に読みとることのできる能力は、望ましい母子相互作用に必要であり、効果的な相互作用につながると予測される。本研究は、幼児の表情写真(JIFPT)を用いて母親の感情認知と母子相互作用がどう関連するかを検討することが目的である。 〈方法〉1)被験児:T市内に住む母子29組。母親は21〜36歳。子どもは第一子で月齢は12〜29ヶ月。2)調査内容:(1)JIFPT図版(2)精神健康度(抑うつ、不安、対児感情)(3)子どもの行動特性。3)母子相互作用場面の観察:遊具のあるプレイルーム内で母子の自由あそびの場面を設定しマジックミラーごしに母子相互作用を10分間観察した。8ミリビデオにより記録。 〈結果と考察〉1)29人の母親から得られたJIFPTへの反応のうち、量的質的に異なる反応を逸脱反応とし、逸脱反応高群と低群で抑うつ・不安・対児感情に有意な差は見られなかった。2)JIFPTの反応において逸脱高群と低群で母子相互作用の行動(接近、回避、かかわりの程度、かかわりの適切さと肯定感情表出の程度)の比較を行ったが有意な差は示されなかった。3)JIFPTの中立写真に対する反応カテゴリーの使用頻度を抑うつ高群と低群で比較したところ、抑うつ高群が有意に感情的に彩られていない中立的な反応をする傾向が示された。以上より、次のことが示唆された。まずJIFPTの反応のカテゴリー化の妥当性についてより詳細に検討する必要があることである。カテゴリー化しにくい複合的反応も多く示され、これをどうカテゴライズするかが今後の一つの課題である。次に母子相互作用の分析方法の精錬である。母子の相互作用を別々に分析するのではなく、相互的かかわりに焦点をしぼり検討する必要がある。またさらに抑うつの母親について検討をすすめ、母子相互作用への影響を検討する必要性が示された。
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