1998 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの精神保健にかかわる「説明と同意(インフォームド・コンセント)」のあり方
Project/Area Number |
08610143
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Research Institution | TAISHO University |
Principal Investigator |
村瀬 嘉代子 大正大学, 人間学部, 教授 (70174290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 直文 大正大学, 人間学部, 助教授 (50266219)
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Keywords | 「知る権利」 / 心理療法 / 「説明と同意(インフォームド・コンセント)」 / 臨床領域 / 精神保健 / 子どもの最善の利益 |
Research Abstract |
近年、医療領域では、インフォームドコンセント(以下IC)について、広範な議論がなされてきたが、子どもの心理臨床では、ほとんど未開拓の領域であった。本研究では、調査研究と事例研究をもとに若干の問題提起を行った。 心理臨床領域においてはICに関わる文献が乏しく、第1章では、まず医療領域、特に精神医療領域における文献の検討を行い、これを踏まえて、子どもの臨床におけるICの特質について討論した。第2章では、子どもの心理臨床においては、客観的、静的情報を伝えるという側面より、クライエント(以下Cl)が「知りたい」と望むものを知らせるという側面が重要だという視点から、臨床場面におけるClからの「問いかけ」に着目し、どのような局面において、どのような「問いかけ」がClからなされるか、治療者はどう対応したかを78事例に基づき検討、分析し、心理臨床において「問いかけ」られるもの(逆に言えばインフォームすべきもの)を整理した。第3章には、2つの調査研究結果を記載した。(1)言語治療教室教員へのアンケート;全体として子どもへの説明に様々な工夫をしていることがわかったが、その中にも「事実を伝える」ことと「子どもの気持ちを大切にする(守る)」ことの間の葛藤が看取された。(2)大学生、大学院生の事例検討グループ経験を通じて心理臨床における「知ること」「伝えること」について、思考の展開過程を検討した。第4章で、このテーマの本質を示すような事例を提示し、第5章において、全体的考察を行った。ICは単なる情報の受け渡しなどではなく、人の根幹にふれるテーマであり、知る側と伝えられる側の意識的統制や意図を越える部分を持ち、双方の関係が問われる営みであること、「伝えること」の可否は、多軸の視点で個別に検討すべきものであることが明瞭になった。
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