1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 勝 神戸大学, 文学部, 助教授 (20165343)
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Keywords | 家族 / 家 / イエ / 理念 / イデオロギー / 宗教 / 経営 / 身分 |
Research Abstract |
本年度の研究では、家族や家族理念にかかわる従来の研究の検討を通じて、以下のことが明らかになった。 1.<家族理念の概念的規定> 家族成員の行為や社会関係には一定の統一性や型があるが、こうした統一性や型は、家族に関する規範や価値にもとづいて形成される。家族理念は、広く解釈すれば、これらの規範や価値の全体にかかわり、より狭義には、個々の規範や価値をより体系化・抽象化した存在で、哲学・思想・宗教など(「イデオロギー」と言い換えてもより)によって正当化されている。 2.<日本の伝統的な家族理念> 従来の研究を踏まえ、本研究では、日本の伝統的な家族理念を家的理念として位置づける。それは、規範や価値の側面において永続性指向、「合理性」、横の連帯、家=公の重視などの特性を持ち、儒教、国学、祖先信仰、仏教などの思想・宗教によって正当化されたものと考えられる。 3.<家的理念と日本社会> 日本の家的理念は、単に家族レベルの理念であっただけでなく、日本社会における組織的の理念ともなってきた。このことは、家的理念の研究は単なる家族研究ではなく、日本社会論という側面をもつことを意味する。また日本の近代化の過程でも、家的理念は積極的役割を担った。 4.<家的理念の多様性と共通性> 家的理念は、それ自体としては、日本社会全体に貫くものであるが、身分や階層の相違によって一定の多様性があることは否定できない。また近代以降には、近世の家的理念は変容するが、そのなかでの家族理念の動向をみると、地域(都市・農村)別の違いが重要になってくる。 5.<家族理念と現実> 以上のような家族理念は、基本的には実際の家族生活の様式を規定するものであるが、その規定性のありかたは、とくに身分や階層によって異なる。より高い身分や階層においてはより厳格な、低い身分や階層ではより緩やかな統制がなされたようである。もっともこの点は、次年度以降の実証的な研究のなかでさらに分析を深める必要がある。
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[Publications] 藤井 勝: "日本社会論と家・同族論" 社会学雑誌. 14号. 112-122 (1996)
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[Publications] 藤井 勝: "家と同族の歴史社会学" 刀水書房, 358 (1997)