1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610179
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
藤井 勝 神戸大学, 文学部, 助教授 (20165343)
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Keywords | 家族 / 家 / 理念 / 都市化 / 過疎化 / 祖先 / あととり / 現代社会 |
Research Abstract |
今年度は、前年度および前年度の研究をさらに深めることを目的として研究を進めた。そして、その成果を「研究成果報告書」として著わした。 1. 本研究では、家族理念の歴史的展開を重視したが、その場合出発点となる家族理念は、近世の家における理念であることが重要であることが、文献的研究の深化を通じて明らかになった。つまり現代家族に対置されるべき家族は、近代ではなく近世のそれである。家族を含めて、近世に成立した「日本的」システムは近代のなかに継承・再編するのであり、戦後の高度成長期においてさえ、「日本的企業社会」として再編された。そして、まさに現代こそ、このシステムの大きな変容期である(解体か再編か)。 2. 以上のように、家族理念の変容をめぐる歴史的認識を明確にしながら、現代社会における都市的・農村的地域の家族理念や、それに関連するテーマの分析を深めた。その結果、第一に、現代の家族理念は、現代的な変容を生じている側面と、伝統的な性格を継承している側面が共存していることが明らかになった。成員の情緒的感情的なつながりを重視する一方で、家的な家族の継承性を求める理念は根強く存在している。親子関係や祖先意識にもそのことはあらわれている。現代の家族理念のうち伝統的な側面が解体すれば、本来の意味での「現代家族」が確立するかもしれないが、調査データの分析からすれば、そのような一方的変容を予想することはできない。家族理念における「日本的」なシステムは再編成の側面も保持しているといえよう。第二に、家族理念をはじめとした家族のあり方を見た場合、農村(とりわけ過疎的農村)では、過疎化要因がさまざまかかちで影響を与えていることが明らかになった。そのため、農村は都市とくらべて遅れている、あるいは伝統的な文化的・社会的特質をもつというー般的な仮説は、必ずしも適用できないことが鮮明になった。
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Research Products
(1 results)