1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新川 登亀男 早稲田大学, 文化部, 教授 (50094066)
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Keywords | 瑜伽師地論 / 大島郡司 / 氏族 / 大島神社 / 海人 / 山人 / 池 / 交通 |
Research Abstract |
初年度は、(1)基礎的資料と関連の参考文献の検索および蒐集をおこない、(2)あわせて和泉地域の関係史跡や景観などを踏査した。まず(1)については、「行基年譜」(旧学考館本・東大史料)「行基菩薩伝」(観智院本七大寺日記付)「大島太神宮〓神鳳寺縁起帳)」(内閣文庫)「大島大明神文書」(東大史料)「天平2年和泉監大島郡知護経」(天理大図書館)などの資料を中心に調査した。なかでも、「行基年譜」流布本の誤脱・錯誤の多さを確認するとともに、天平13年記以外の箇処における資料上の典拠や性格についても検討をすすめた。大島神社関係文書に関しては、和泉地域の生業や生活文化、婚姻関係などに迫まりうる貴重な資料群であることを確認した。ついで天平2年写経では、旧来不明であった所在の確定ができ、かつその跋語の書きかたの特殊性や問題点について知ることができた。この写経は、本研究課題上の重要な資料と考えられるので、さらにその慎重な検討をすすめたい。参考文献の検索や蒐集に至っては膨大なものがあり、逐次実行しつつあるが、本年はとくに、新羅僧元暁の活動と行基の活動との比較史的視点に注目して、その方法論や有効性の再検討をおこない、同時に元暁そのものの社会史研究をおしすすめた。(2)については、堺市の家原寺、大島大社、〓田神社、華林寺、大野寺土塔、堺市博物館、大阪狭山市の狭山池、岸和田市の久米田寺、久米田池などの踏査をおこなった。このうち、大島大社では縁起帳を含む文書記録類を閲覧することができ、大野寺では文字瓦、堺市博物館でも多くの文字瓦と行基絵伝などを調べることができた。一部館外の文字瓦(個人蔵など)も同館にて調査の機会を与えられた。これからは、これら文字瓦を中心とした社会的な結びつきの再考察をすすめたい。池については充分な踏査に至らず、多くの課題を残したが、その研究の方法論も含めて今後の問題としたい。ただ、当該地域は開発にともなう〓観の大きな変容が認められ、その復原的な研究については目下模索中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 新川登亀男: "八重樫直比古著『古代の仏教と天皇』" 日本思想史学. 28. 165-171 (1996)
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[Publications] 新川登亀男: "『新版日本史辞典』「鉐文」等51項目" 角川書店, 約3ページ (1996)
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[Publications] 新川登亀男: "『日本文化と道教』2「日本古代における仏教と道教」" 雄山閣出版, 33 (1997)