1998 Fiscal Year Annual Research Report
帝国形成期におけるイギリスの植民地植物園と植物政策の研究
Project/Area Number |
08610387
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
島田 真杉 京都大学, 総合人間学部, 教授 (10108962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 昭夫 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (00128779)
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Keywords | イギリス / 植物園 / 資源 / アメリカ / ジョージア |
Research Abstract |
イギリス帝国の形成期における、食糧・工業原料等の植物資源の確保・利用にはたした植物園・植物研究施設の役割と機能を、実証的にあきらかにすることを課題とする本研究計画は第3年次にあたり、英国史を主要な研究対象とする川島と、合衆国史を主要な研究対象とする島田研究の領域の重なりあう、植民地時代の北米大陸に関して、1730年代にいたって、最後の北米植民地として建設された、ジョージア植民地を選んで、上記関心に該当する歴史的事例の検出と分析を共同で行なった。南部植民地であるジョージアは、ジョージア・トラスティーズと呼ばれる財団によって、計画的・実験的に建設がはかられ、財団本部がロンドンに置かれたことからも推し量られるように、第一次植民地帝国(旧植民地体制)の完成の時期における、本国英国の帝国・植民地に対する意図・企画がもっと純粋かつ直接的に実現にうつされたケースとして、本研究計画の目的のためにも、もっとも好適であると判断された。研究をすすめるなかで、従前、債務者の厚生の機会として土地が賦与された、博愛的帝国主義の事例として、また対立を深めていたスペインからの帝国・植民地領土の防衛のための前線の形成が目的とされてきたジョージアの植民地形成の目的にくわえて、イギリスが外国への依存が余儀なくされていた熱帯・亜熱帯の植物資源の帝国領土内での実現をはかるという、重商主義的企図が存在したことが明らかになった。財団はその目的にあてるべく、植民地の建設開始と同時に、最初の定住地サヴァンナにトラスティーズ・ガーデンと呼ばれる植物移植・配布のための施設を設置したこと、またこの施設と直接に関連して、ロンドンに、ジョージア植物学・農業改良委員会と呼ばれる篤志的団体が設立され、その資金的援助によって、中米熱帯地域への有用植物の採集のための植物学者の派遣事業が行なわれていることを知りえた。これらはジョージア植民地建設が、おおがかりな植物移植プロジェクトという性格を想定されていたことを示すものであるとの結論を得た。
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