1998 Fiscal Year Annual Research Report
シェイクスピア演劇における母親不在の問題の批評的研究
Project/Area Number |
08610488
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
栗原 裕 大妻女子大学, 文学部, 教授 (20086763)
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Keywords | 母親不在 / 母親存在 / Gertrude / Volumnia / 〈対幻想〉 / 官能の過剰 / 「ハムレットの問題」(エリオット) |
Research Abstract |
1.母親不在の徴候は表面に観察される傾向であるらしく思われる。数は非常に少ないがHamletの母GertrudeやCoriolanusの母Volumniaのような相当に強烈な母親像が存在しなくはないからである。 2.表面の母親不在あるいは数少ない母親存在の背後には心理的問題が嗅ぎとれる。あえて、歴史・社会的条例をも巻き込んだ心理学的問題であると言ってもいいであろう。それは、シェイクスピア演劇の、さらにはシェイクスピア自身の<対称想>の問題であったであろう。 3.心理学的観点をとるなら、不在でなく存在する母たちの像に照明をあてることから始めるのが道筋である。まずGertrudeを、つぎにVolumnoiaを見るのが適当であると考える。この二人は母親不在の指摘を忘れさせるほど特異であると言っていい。 4.Hamletの母Gertrudeの性格・人物を特定することが出発点である。たぶん、もっとも重要な要素が官能の過剰あるいは情熱の超過とでも言うべき特徴である。話は、一族の復讐劇Hamletの上におおいにかぶさったためにこの劇を錯綜させることとなってしまったこのシーンの主題に戻ることとなる。この劇で主人公Hamletの躓いたのが、そして劇作家シェイクスピアの躓いたのが性の問題であった。作業のテーマはT.S.エリオットが「ハムレットの問題」として提示した問題に解説・敷衍を加えることである。
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