1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610517
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 昭裕 京都大学, 文学研究科, 教授 (50135498)
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Keywords | テクスト言語学 / 古教会スラブ語 / 古ロシア語 / 発話動詞 / 語り / 語順 / 直接話法 |
Research Abstract |
本研究はテクスト言語学の立場から、中世スラブ語の諸文献の言語的特徴を明らかにすることを目的とし、とくにスラブ最古の文章語である古教会スラブ語と古ロシア語をはじめとする他のスラブ文章語の関係について考察することを目指すものである。本年度はつぎの2点について研究した。 1.前年度に引き続き、古教会スラブ語福音書の発話動詞の機能について研究した。そして、従属文を導くことのできる主要な二つの発話動詞glagolati「言う」,resti「述べる」のテクスト中における分布、機能を分析し、前者が発話行為の生起が予想できない文脈で、発話行為そのものの存在を示すことを目的として使用されるのに対し、後者は発話行為の生起が予想できる文脈で、より重要な内容の発話を導入するために使用されるという差異を明らかにした。さらにこれら二つの発話動詞と、vbprositi「尋ねる」,otvestati「答える」,povedeti「語る」、moliti「頼む」といった、直接話法を導入することの少ない他の発話動詞との使用を比較し、これらの動詞とglagolatiの使用の平行性を示した。この成果は、1998年秋にクラクフで行われる予定の国際スラヴィスト会議日本寄稿集に発表した。 2.古いロシア年代記の「語り」タイプのテクストで使用される語順に対する、古教会スラブ語福音書の言語の影響を明らかにするため、古教会スラブ語福音書のテクストにおける基本的語順の研究を開始した。この点については、すでに上記1.の発話動詞が現れる文脈において、古教会スラブ語と古ロシア語に平行性が見られることを指摘しているが、ここでは他の文脈に拡げて検討を行っている。
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