1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610521
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 日出征 東北大学, 文学部, 教授 (90077496)
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Keywords | 朝鮮語 / 口蓋化 / Non-Derived Blocking / 対応理論 / 結合制約 / ウムラウト / 不完全指定 / Crisp-edge制約 |
Research Abstract |
朝鮮語にみられる音韻現象のうちさらに詳細な分析が必要であると思われるものの一つに口蓋化現象がある。口蓋化はウムラウト現象と関連しており,この二つの現象を統一的に説明することが求められる。さらに,朝鮮語の口蓋化には二つの種類がある。一つはt-口蓋化と呼ばれ,音韻レベルで破擦音を作り出す過程で,非派生形には適用されない。もうーつは,s,n,l-口蓋化と呼ばれ,それぞれの音韻の異音を作り出す過程で,非派生形にのみ適用される。この二つの口蓋化は目標の子音に後続する前舌高母音と舌尖わたり音によって引き起こされるが,これと同様に,この高母音によって後舌母音が前舌母音になるウムラウト現象があり,この過程は口蓋化子音によって阻止される。 この現象に対して,従来次のような5つの分析が提案されてきている。(a)By Strict Cycle Condition(Ahn1985)(b)By Revised Alternation Condition(Iverson 1987)(c)By Underspecification and Structure Building Rule(Kiparsky 1993)d)By Extraprosodicity(Oh 1995)(e)By Optimality Theory with Underspecification(Hong 1997)。(a)は二つの規則と循環を用いて口蓋化現象を説明する。しかし,ウムラウトとの関連は捉えられず,さらに,規則の適用を語彙的に限る必要がある。また,非派生阻止は語彙のレベルでも語彙後のレベルでも起こることを採れ得られない。(b)は複合語が口蓋化を蒙らないことが説明できない。(c)は文脈依存型の不完全指定(underspecification)に依存しなければならない。(d)は異音を作り出す口蓋化が複合語に適用されないことを説明するために,韻律外性の例外としなければならないし,規則が接辞化の後で,しかし,音節化の前に適用されなければならない。(e)は事実と異なる音形を最適形としなければならないのみ加え,文脈依存の不完全指定を用いることになる。これまでの分析は以上のような欠点を持っている。この欠点を克服するためには分断制約(Crisp-edge Constraint)を拡張し,さらに,結合制約を用いた最適性理論による解決が合理的であり,簡潔な説明が可能となることを示した。 さらに,音韻変動について制約のランキングの有無や交替による説明だけではなく,調音理論を取り入れた段階的制約により複数の最適形の出現の可能性を説明できる理論を構築するための研究を行っている。
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Research Products
(1 results)