1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐藤 岩夫 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (80154037)
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Keywords | 訴訟率 / 司法統計 / 訴訟へのアクセス / 福祉国家 / ドイツ |
Research Abstract |
1 ドイツにおける訴訟率の規定要因に関する2年間の研究の初年度にあたる今年は、ドイツにおける司法統計資料の網羅的な収集とそれに基づく基礎的データの分析をおこなった。 2 まず、司法統計資料の収集に関しては、1880年以降現在に至るまでの約1世紀にわたる期間の基本的な統計はほぼ網羅的に収集することができた。ただし、第二次世界大戦直後の連合国による占領時期については、司法管轄が米・英・仏・ソ連各国に分割されていたため、資料の確認・収集は困難であった。イギリス占領地域に関する統計は収集し得たが、それ以外の占領地域については、来年度の課題として残った。 3 上記の資料に基づいて分析した結果、以下のことを確認し得た。(1)ドイツの訴訟率は、時代によってかなりの変動をともないつつも、概ね、他のヨーロッパ諸国に比べると高い水準を推移している。(2)日本と比較可能な時期においては、日本の訴訟率の10〜25倍の高さを示している。(3)また、戦後についてみれば、特に1970年代以降にかなり急激な訴訟の増加傾向がみられる。 4 このようなドイツの高訴訟率をもたらしている要因は何かを検討することが来年度の課題であるが、今年度の研究の限りでも、3 (3)の点について、当時の左翼政権が、福祉国家政策の一環として、法律扶助の充実、権利保護保険の促進、訴訟の迅速化、法律相談制度の拡充、弁護士の増加など、多方面にわたり国民の訴訟へのアクセス可能性を拡大する政策をとったことが重要な要因になっていることを確認することができた。
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Research Products
(1 results)