1996 Fiscal Year Annual Research Report
刑事事件の被報道者の名誉・プライバシーと表現の自由の調整、及びメディア責任制度
Project/Area Number |
08620046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
浅野 健一 同志社大学, 文学部, 教授 (90268110)
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Keywords | 表現の自由 / 犯罪報道と人権 / メディア責任制度 / プレスオンブズマン / 報道幹議会 / 報道論理 / ジャーナリズム / 名誉毀損・プライバシー侵害 |
Research Abstract |
1981年に逮捕され95年に無罪が確定した大分・みどり荘事件の輿掛良一さんの報道被害についてメディア各社、警察、弁護団などを調査し、結果をまとめた。逮捕当時の記者、現在の一線記者の意識の違いが浮き彫りとなり、犯罪報道の構造を改革を求める声が強いことも分かった。改革の道筋を示すべき新聞学の責任も重い。 また94年6月の松本サリンでの河野義行さんに対する捜査とメディアによる人権侵害について調査。米国アトランタ・五輪公園爆弾事件の第一通報者リチャード・ジュエルさんの事例との比較も検討した。日米の犯罪報道を比較研究を始めた。 96年には日本に報道評議会がないために、郵政省を中心に権力による規制を招きかねない状況が強まっている。一方で、新聞労連が96年7月に報道論理網領素案を発表、それについての記者、編集者の見解を集めた。私の修正案を提示。97年2月に素案が大幅に修正され、「新聞人の良心宣言」として正式に決定された。 日弁連、人権と報道・連絡会などと協力してメディア責任制度の確立に動きだした。新聞労連は現場記者の人権擁護の取り組みを支援することも決めた。フィールドワークによって一線記者の意識を調査した。放送界でもNHKと民間放送連盟が4月から自主的な苦情対応機関を設置することを決める過程を追い、諸外国の例と併せて検討した。これらの調査結果について平川宗信名古屋大学教授・川崎英明東北大学教授ら刑法の専門家と意見交換した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 浅野健一: "検証みどり荘事件報道被害時効成立." 創. 287. 132-143 (1996)
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[Publications] 浅野健一: "小野悦男さん逮捕報道の大問題" 創. 294. 98-111 (1996)
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[Publications] 浅野健一: "どこまで続く「犯罪報道の犯罪」" 現代. 第30巻7号. 220-223 (1996)
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[Publications] 浅野健一・服部孝章・平川宗信他: "犯罪報道と人権侵害-松本サリン事件と報道論理." 法学セミナー. 503. 99-106 (1996)
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[Publications] 浅野健一: "世界のメディア責任制度" 潮. 454. 136-145 (1996)
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[Publications] 北村肇.潮見憲三郎.浅野: "日本での報道評議会をどう作るのか." 創. 297. 116-131 (1997)
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[Publications] 浅野健一・河野義行: "松本サリン事件報道の罪と罰" 第三文明社, 230 (1996)
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[Publications] 浅野健一・山口正紀: "無責任なマスメディア" 現代人文社, 239 (1996)