1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本の対フィリピン経済援助事業における政策意図・実施過程・インパクトの比較研究
Project/Area Number |
08630064
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
横山 正樹 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (90182716)
|
Keywords | フィリピン / 経済援助 / ODA / 円借款 / カラバルソン開発計画 / 随伴的結果 / インパクト(社会的・経済的・政治的) / 政策意図 |
Research Abstract |
本年度においては、前年度に引き続き、現地調査(1991〜97年のさまざま時期)でビデオ記録された各ODA事業等関係者インタビュー等の整理、および専門的助言をも参考にしたそれらの分析を主としておこない、並行して関連する調査の筆記記録・収集文書およびビデオ資料を含め、データベース入力をさらに進めた。そこから、ルソン島マニラ首都圏に南接するカラバルソン地域総合開発計画を主とした日本のODA関連事業において、当初の目標・期待と現実とのギャップの存在がいっそう明らかにされてきた。 カラバンソン計画における主要事業のひとつ、バタンガス国際港拡張事業の場合は、事業地住民が強力な移転反対運動を展開し、強制収用後も隣接地に主住している。裁判係争中であり、問題は解決していない。政府港湾局は移転住宅地を用意したが、住民の生業を保障する視点を欠いていた。彼らの生業の場である港から遠すぎたのである。同様の問題は、パグビラオ火力発電所建設などの場合にも生じている。漁民を別の場所への移転させたが、彼らの協同組合経営は破錠し、生業の成り立つ見通しはついていない。事業用道路建設が海流に澱みを生じて、環境破壊との批判も受けている。 これらのように、フィリピン政府・地元事業関係者は政策を講じているのだが、事業で影響を受ける住民への配慮において、適切性を欠く、あるいは不十分な例が見受けられる。このギャップにかんする諸要因の検討および総合的分析は来年度に継続される研究の主要課題となろう。 なお本研究についてはすでに昨年度4月にホノルルの国際フィリピン学研究大会において中間報告したが、さらに論文「フィリピンにおける『開発』という名の暴力」(共著暑・太田一男編『国家を超える視覚-次世代の平和-』所収、法律文化社、1997年6月30日発行)として中間発表した。
|