1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
花井 俊介 香川大学, 経済学部, 助教授 (70212149)
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Keywords | 戦間期 / 蚕糸業 / 郡是製糸 / 片倉製糸 / 神戸生糸市場 / 片山金太郎 / 生糸月報 / 優等糸 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦間期における日本蚕糸業全体の構造的変化を、各地域の特徴ある様々なタイプの製糸経営資料に基づいて分析・解明することにあった。この目的に従って、まず関西を代表する巨大製糸経営であった郡是製糸の資料調査を行った。同社は現在、100年史を編纂中であり(本年3月刊行予定)、幸い社史編纂室の全面的協力を得られる状況にあったため、本年度は同社資料の調査を中心に行うこととし、様々な新資料の発掘と撮影に成功した。特に、同社創設から経営陣の中核を占めた片山金太郎専務が書き遺した「要録」(業務メモ)は、同社が巨大経営に発展し得た理由、すなわち、他の優等糸製糸経営と異なり、優等糸生産体制を維持しながら何故巨大化しえたのかという問題を考察するための恰好の資料であり、現在分析を進めつつある。郡是製糸以外では、伝統的生糸生産地域長野県諏訪について岡谷蚕糸博物館所蔵の諸製糸経営資料の調査を行い、日本最大の製糸経営片倉製糸の「生糸月報」を撮影・収集した。同資料には大正末から昭和初期の生糸市場の混乱期における同社の生糸生産と販売状況について詳細な数値データが収められており、現在データ入力と分析を進めつつある。この作業を通じて、同社が生糸市場の急速な変貌に対応して、いかに優等糸生産体制への転換を進めたかについて、各分工場単位で詳細に解明しうるであろう。その他としては、神戸大学および京都府立総合資料館の所蔵資料調査を行い、神戸生糸市場などに関する資料を若干収集したが、神戸市場の構造的特質(横浜市場に対抗しつつ、いかなる方式で荷主獲得を行ったか)を解明するための十分なデータは得られていない。今後は、この点に関する調査を継続的に行うとともに、本年度に実施できなかった各地の中小規模製糸経営、特に新興地域(四国・九州)の製糸経営データの発掘・収集・分析を進めねばならない。
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