1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630094
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY OF COMMERCE |
Principal Investigator |
南部 稔 神戸商科大学, 商経学部, 教授 (00047490)
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Keywords | アジア金融・通貨危機 / 不良債権 / 人民元切り下げ / 国有商業銀行 / 資産負債比率 / 中国人民銀行再編 / 赤字国債 / 中央金融工作委員会 |
Research Abstract |
平成10年度の主要な課題を「アジア金融・通貨危機と人民元」とした。それはアジア金融・通貨危機の影響から1998年に入って中国経済は輸出の鈍化、直接投資の減退が顕著になって、8%成長率の確保が難しくなってきたので、国内外から人民元の切り下げがあるのではないかという議論が起こってきたからである。結局、朱鎔基首相が公約したように人民元の切り下げを回避することができた。他方、デフレ化が進んでいる国内経済を活性化させようと、1993年以来の「適度な引き締め政策」を金融緩和策に切り替えて、金利を3度も引き下げると同時に融資枠を大きく緩めた。だが国有商業銀行は過去の政策融資から膨大な不良債権を抱えて四苦八苦しており、そこにさらに不良債権が嵩むと資産負債比率が悪化し、銀行経営を危機的状況に陥れるから貸し渋りが横行した。そのため金融緩和策では内需拡大を喚起できなかったので、政府は積極的な財政出動にでて、1000億元の赤字国債を発行して公共投資に向けた。その結果、7.8%の成長率を達成し、ほぼ初期の目的を達成した。 アジア金融・通貨危機の影響が中国にとって比較的軽徴だったのは、中国は資本取引の自由化を認めていなく、投機資金が中国を襲うことはなかったからである。だがWTO加盟もあり、早晩、なんらかの形で国内金融市場の開放が進んでいくであろうから、いま健全な金融システムを構築しておかなければならない。そこで、中国人民銀行の視点を広域9行に再編して「銀行と行政の癒着構造」の打開にメスを入れ、また大局的な観点から金融システムの監視体制を強化すべく中共中央に金融工作委員会を設けた。 本年度は以上の研究を含めて過去3年間の研究の成果を纏めて報告書を作成したが、その詳しい内容は「研究成果報告書概要」で紹介している。
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