1996 Fiscal Year Annual Research Report
経済戦略論の枠組を援用した地域興をめぐる成功要因の分析
Project/Area Number |
08630124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
古田 龍助 熊本学園大学, 商学部, 教授 (00190158)
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Keywords | 過疎地域活性化 / 経営戦略論 / 九州地区 |
Research Abstract |
過疎地域の活性化策については、北から南まで数多くの事例が報告されているが、経営戦略論の観点から見ると、戦略性の3条件、すなわち(1)目的-手段連鎖の意識、(2)競争優位の創出、(3)競争優位の持続性に無頓着なもの目立つ。さらにされ以前に、活性化策の戦略性(=基本方向)を云々するのであれば、まず激しく衰退してきた第一次産業との接し方にかんして、地域に確固たる合意があるかどうかを知る必要がある。この場合、戦略形成の分かれ目は、都市圏からの交通アクセスと自然景観が良好であるかどうかだろう。 交通アクセスと自然景観に恵まれなければ、地域あげて第一次産業のなかの成長セグメントに集中し、近代的な経営を指向するしかない。そうすれば、目的-手段の連鎖に悩む必要はない。ただし、第一次産業の近代的なプロを目指すのであれば、当然ながら少数精鋭の体制にならざるを得ないから、人口増加は期待できないし、高齢者の余剰人口を抱える重荷も改善されないだろう。 温泉や自然景観、そして大都市圏からの程良い交通アクセスといった条件が整っていれば、過疎地域は農業から観光サービス業へとの転身を図るのが一般的な傾向だ。ただし、この路線で持続的に成功できるかどうかは、リーダーのセンス次第である。都市住民は自然のなかでゆっくりするために過疎地域にやって来るのだが、過疎地域の人々の旅行と言えば、従来観光型の団体慰安旅行が一般的だから、彼らには都市住民のニーズがなかなか理解できない。 九州の過疎地域活性化対策としては、全国的にも最も有名なものの1つが小国町の試みである。自然環境の中で文化水準を高める町づくりと表現されようが、この路線だと人口・経済効果はない。しかし、通信基盤と知識産業がさらに進展し、教育・就業制度を中心に日本社会が大きく変貌することがあれば、都市住民の移住先として人気を集めることは間違いない。
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