1996 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロアトールの生物群集における多種共存促進と「住み込み連鎖」仮説の検証
Project/Area Number |
08640795
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西平 守孝 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80004357)
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Keywords | 棲み込み連鎖 / 多種共存促進 / マイクロアトール / 塊状ハマサンゴ / フタモチヘビガイ / イバラカンザシ / 埋在動物 / 被食回避 |
Research Abstract |
塊状ハマサンゴのマイクロアトールをサンゴ礁のモデルとして,それを足場として成立する生物群集の発達過程を群集構造の複雑化過程=多種共存の促進過程と捉え,多種共存・促進機構としての「住み込み連鎖」仮説を検証すべく研究を行なった。さまざまな大きさの塊状ハマサンゴ上において,微生息場所の構造とそれを作り出す生物の作用と役割を詳細に記載・分析するとともに生物の微生物場所利用を把握し,種組成や住み込み構造の動態を明らかにすることが目的である。沖縄県久高島において,礁池のマイクロアトール群から発達段階の異なる群体を20個程度選定して恒久的マークを付し,継続観察を開始した。特に,塊状ハマサンゴに埋没して生活する大型管棲動物の代表的な種として,フタモチヘビガイとイバラカンザシを取りあげ,これら2種の動物がハマサンゴ類に集中的に棲息することを明らかにした上で,これらが群体に埋在することによってハマサンゴが受ける利害を推測した。いずれの種も,ハマサンゴ表面のある一定面積を占有するため,それに相当する面積分だけポリプの数が減少する。ハマサンゴが被るそのような不利益に加えて,フタモチヘビガイの影響の及ぶ場所では,ハマサンゴの表面が平坦になることによってさらにポリプの数が減少していたが,イバラカンザシの場合にはそのような影響は見られなかった。また,イバラカンザシの存在は,ブダイによるハマサンゴの捕食を回避させる効果を持たないが,フタモチヘビガイが棲み込むとその効果が極めて大きいことがわかった。このように,一見不利益を被っていると考えられがちな埋在性動物の棲み込みにも被食回避効果があり,捕食者の存在の下ではホストにとっても利益をもたらしていることが示唆された。このような棲み場所提供者と棲み込み者の関係は,共進化的に強化されてきたものと考えられる。研究成果の一部を著書の中で発表した。
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Research Products
(1 results)