1997 Fiscal Year Annual Research Report
複合絶縁系の接触界面を横切るキャリア輸送機構の研究
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08650395
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Research Institution | Fukui national College of Technology |
Principal Investigator |
川本 昂 福井工業高等専門学校, 電気工学科, 助教授 (90110189)
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Keywords | 接触電位差 / ケルビン法 / 固体構造 / 仕事関数 / 電子レベル / 界面 / 表面状態 / 絶縁性高分子 |
Research Abstract |
近年、電気、電子機器・部品の小型化に伴って複合絶縁材料に加わる電界が益々高くなりつつある。この複合絶縁系には、多くの界面が存在しており、これが複合絶縁系の界面での電子性電荷の交換率に非対称特性をもたらす。この原因を解明するには複合系を構成する絶縁性高分子の電子レベルの評価法を確立する必要がある。今回は、これまでに検討してきた評価法の内、ケルビン法の有効性について検討するため、基準となるAuと絶縁性高分子との接触電位差に及ぼす高分子の膜厚の影響、また、高分子の劣化要因であるUV光や熱がその表面状態に及ぼす影響についてAuに対する高分子薄膜の表面電位を測定して調べた。 PVP(ポリビニルピリジン)の場合、接触電位差は正で膜厚の増大に伴って大きくなり、55nm付近より一定(+0.44V)となった。一方,PVK(ポリビニルカルバゾール)の場合、接触電位差は負で膜厚の増大に伴い負方向に大きくなり、約160nmより一定(-0.37V)となった。このように、材料の種類によってフェルミ準位とAuと高分子膜との間の電子の授受領域が異なる。 次に、接触電位差に対する熱の影響について調べた。PVP、PVKともに200℃の熱処理によって仕事関数がそれぞれ0.28eV、0.07eV増大することがわかった。これはIRスペクトルの吸収ピークの増大と対応している。このように加熱により高分子の化学構造が変化して、そのフェルミ準位を変化させることがわかった。 更に、接触電位差に対するUV光の影響について検討した。PVPの接触電位差はUV光の照射時間の増大につれて小さくなった。一方、PVKの接触電位差はAuに対し負方向に小さくなり、照射時間が10分を経過すると一定となった。UV光照射によりPVPの仕事関数は照射10分後に0.08eV大きくなり、PVKの仕事関数は逆に0.11eV小さくなることがわかった。これもIRスペクトルより分子構造の変化と対応していた。以上、ケルビン法は、高分子の電子レベルの評価法として、特に、高分子の紫外線劣化、熱劣化の解析手法として有効であることが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 川本 昂: "絶縁性高分子のXPS,大気中UPSから推定した電子レベル" 第29回電気絶縁材料シンポジウム予稿集. VIII-1. 175-178 (1997)
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[Publications] 川本 昂: "有機色素ドープポリマーを用いた負性抵抗素子" 誘電・絶縁材料研究会資料. DEI-97. 149-153 (1997)
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[Publications] Akira Kawamoto: "Electronic Levels inInsulating Polymers Estimated by XPS and UPS" Proceedings of 6th International Conference on Conduction and Breakdown in Solid Dielectrics. ICSD'98. 1-4 (1998)
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[Publications] 村上加奈,川本 昂: "ケルビン法による絶縁性 高分子の電子レベルの測定" 学生による研究発表会講演論文集. E-11 (1998)