Research Abstract |
西南北海道の熱水性金属鉱床のうち,最大規模を有する豊羽多金属鉱脈型鉱床の南西地域における金銀,レアメタルの賦存特性について検討を行った.本地域は試錐探査の結果,多金属鉱化作用が広範囲に及んでいることが明かとなり,今後の開発が有望である.試錐で着脈した鉱石について検討した結果,以下のことが判明した. 1.Auは,1)黄鉄鉱,少量の閃亜鉛鉱,方鉛鉱,Bi,Sn,W鉱物を鉱染状に伴う石英質鉱石,2)黄鉄鉱-黄銅鉱-(閃亜鉛鉱)-石英の塊状鉱,3)黄鉄鉱-閃亜鉛鉱の脈状鉱,4)閃亜鉛鉱-石英の塊状鉱にエレクトラムとして含まれる.エレクトラムは一般に5〜30μmの粒径で,1)の鉱石では石英中,2)〜4)の鉱石では黄鉄鉱または閃亜鉛鉱中,あるいはそのいずれかと石英の粒間に認められる.その含銀量(atom.%)と流体包有物または閃亜鉛鉱-黄錫鉱組み合わせから推定される生成温度は1)で14〜28%,230〜240℃,2)と3)で40〜50%,260〜290℃,4)では多くが25〜55%(37〜87%と不均質な粒子も存在する),250〜280℃である. 2.Agは,黄鉄鉱に富み,少量の黄銅鉱と黒色閃亜鉛鉱,石英を伴う塊状鉱中にPb-Bi-Ag系鉱物として認められるほか,時にTeを伴う銀鉱物(ヘッス鉱と含Teカンフィールド鉱)が存在する.この種の鉱石は250〜320℃の温度で4〜5%の塩濃度の鉱液から生成したことがわかった.Agはそのほか黄錫鉱や四面銅鉱にも微量に含まれており,Ag品位に少なからず寄与していると推測される. 3.Inは,閃亜鉛鉱中に0.nwt.%,最大4.8wt.%含まれているほか,黄錫鉱中にも0.nwt.%認められる.In品位の高い鉱石は,上記Agと同様な条件で生成したと考えられる. 4.以上のうち,Inは南東部の出雲・信濃両脈と類似するが,AuとAg,Teは異なった特徴を示している.
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