Research Abstract |
前年度は,キャベツジュース(CJ)の経口投与による肝癌時高コレステロール血症の改善機構と作用本体を明らかにした.また,CJの経口投与によるマクロファージの腫瘍壊死因子α(TNF-α)産生刺激作用は,マクロファージへの直接作用ではないことを明らかにした。今年度は,CJのTNF産生刺激作用に焦点を絞り,以下の検討を行なった. 1.TNF-α産生能におよぼすキャベツジュースの投与量と投与時間との関係 まず,腹水肝癌AH109A移植後10日目のラットに各種濃度(0,0.1,1,10,100%)のCJを経口投与し3時間後にリポ多糖(LPS,10μg/100g体重)を腹腔内注射しその2時間後に血清,固型肝癌および脾臓のTNF-αレベルを測定した.その結果,1%のCJを投与した際に血清および組織TNF-α量が最大になった.そこで,1%のCJを投与しその1,3,5および12時間後にLPSを投与した.その2時間後にTNF-αレベルを測定したところ,CJ投与3〜5時間後に血清および組織TNF-α量が最大となった. 2.キャベツジュース単独またはリポ多糖との併用による癌増殖抑制効果の検討 上記1の結果から,CJ濃度1%,CJ投与3時間後にLPSを投与することとした.ラット背部へAH109Aを移植後10日目に,固型癌の大きさが等しくなるように群分けし,(1)水,(2)1%CJ,(3)水+LPS,(4)1%CJ+LPS,および(5)100%CJ+LPSを13日間投与した。その結果,固型癌重量は1%CJ+LPS群で50%の有意な低下が認められたのに対し,100%CJ+LPS群では15%程度の低下傾向を示したに過ぎなかった. 3.TNF-α産生を刺激するキャベツジュース中の有効成分の特性の検討 脾臓細胞培養系モニター系として,分子量,熱安定性,酸処理安定性を調べた結果,有効成分は分子量10kDa以下で,熱および酸に比較的安定な物質であることが認められた.有効成分の同定は,今後引き続き検討する必要がある.
|