1996 Fiscal Year Annual Research Report
脳内サイトカインによる神経内分泌性胃酸分泌調節の研究
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08670075
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
坂口 武夫 新潟大学, 医学部, 助手 (40108022)
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Keywords | Gastric acid secretion / Interleukin-1 / Hypothalamus / Paraventricular uncleus / Gastrin / Cytokine / Neural control / Rat |
Research Abstract |
ラットで、脳内サイトカインのインターロイキン(IL)-1がガストリン作動性の神経内分泌性胃酸分泌制御系を修飾することを明らかにした。すなわち、ガストリンの視床下部室傍核への前投与によって促進された胃酸分泌が同部位へのIL-1の投与によって抑制されるのである。反応はIL-1βに用量依存性を示したことから、IL-1βに特異的な反応であると判定され、また組織学的検索では核内の反応部位が特定されることも確かめた。このことは免疫組織化学的に同定されたIL-1受容器の核内分布と活性部位に一致する(投稿中)。先に、IL-1の胃酸分泌効果は遅延性と報告された。しかし、電気生理学的研究では、IL-1の投与後数分以内の早期に反応する神経細胞が視床下部の諸核で観察された。従って我々の観察した数分単位の応答はそうした早期反応に相当する。すなわち、IL-1の胃酸効果は2つの反応相から成るのである。遺伝子発現過程でIL-1は2つの異性体に分かれる。α型とβ型である。これまで、胃酸分泌抑制効果はβ型が優位と報告されたが、この核では異性体間に効力差を認めなかった。IL-1受容器は視床下部複数核で同定されているので、IL-1の異性体効果はそうした複数核が決定することになる。IL-1βによって抑制される胃酸効果はインドメタシンの前投与で部分的に阻止された。この結果は反応機序にプロスタグランジン産生系が含まれることを示す。IL-1βは星状膠細胞と小膠細胞から分泌されるが、生理的作用濃度は不明である。ここではpicomolar量のIL-1が効果を示した。室傍核近接のこれらの細胞からIL-1が局所的に分泌されるならばその濃度は相当に高いことが予想され、IL-1の生理学的意義を推定させる。室傍核は延髄の迷走神経背側核に局在する自律神経の節前神経に直接神経繊維を投射している唯一の視床下部核である。こうした神経投射を介する調節系として室傍核ガストリン作動性胃酸分泌制御系が知られてきた。これら一連の成績はIL-1がこの系に組み込まれていることを示しており、脳内サイトカインと神経内分泌の接点を実証することになった(投稿中)。
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