1997 Fiscal Year Annual Research Report
肝障害増強因子としての肝交感神経の作用機構とサイトカインの関与
Project/Area Number |
08670180
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岩井 将 愛媛大学, 医学部, 講師 (00184854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋津 孝 愛媛大学, 医学部, 教授 (30090400)
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Keywords | 肝障害 / ガラクトサミン / 交感神経 / Tumor Necrosis Factor-α / 肝類洞細胞 / ノルアドレナリン |
Research Abstract |
肝障害に及ぼす肝交感神経の作用とサイトカインの関与について、ex vivoの実験系である肝灌流法を応用した"神経-肝"標本を用いて解析し、以下の新しい知見が得られた。 1.肝神経刺激による肝障害増強作用の解析:ガラクトサミンを投与して作成した肝炎モデルラットの肝をin situで門脈から定圧で灌流しながら肝神経を電気的に刺激すると肝からの細胞内酵素(LDH及びAST)の漏出が急激に増加することから、肝交感神経の興奮は肝障害を増強させる作用をもつことが判明した。この肝神経刺激による肝障害増強作用は、αブロッカーにより抑制されることから、ノルアドレナリンを伝達物質とし、αレセプターを介する作用であることが明らかとなった。さらに、神経刺激の代わりに肝類洞細胞を刺激するZymosanを門脈内に注入した場合にも、神経刺激の場合と同様の肝障害増強効果が認められたことから、肝神経の作用における肝類洞細胞の関与が示唆される。 2.肝細胞の作用におけるTNFαの関与:肝類洞細胞から産生放出される因子としてサイトカインに注目し、中でも肝細胞死に関与すると考えられるサイトカインであるTumor Necrosis Factor-α(TNF-α)についてその関与の可能性を検討した。このためTNF-αのBioassay系を新たに設定し、これを用いて肝から灌流液中へ放出されるTNF-α活性を測定すると、TNF-α分泌は障害肝において高値であり、肝神経の刺激により急激に増加することから、交感神経による調節をうけることが判明した。また、抗TNF-α抗体を用いた肝組織内TNF-αの免疫組織染色では、ガラクトサミン障害肝において肝組織内TNF-αの染色性が高まっていることが明らかとなった。さらに、TNF-αの分泌増加はラットをガドリニウムで前処置することによって消失することから、TNF-αの主な産生部位はKupffer細胞であると考えられる。 これらの結果より、肝交感神経の興奮は肝障害を増強させる作用をもつことが明らかとなり、この作用に肝組織内、特にKupffer細胞でのTNF-α産生が重要な役割を有することが示された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Iwai,M., et al.: "Exaggeration of acute liver damage by hepatic sympathetic nerves and circulating catecholamines in pertfused liver of rats treated with D-galactosamine." Hepatology. 23. 524-529 (1996)
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[Publications] Nakata,Y., et al.: "Prolonged decrease in hepatic connexin 32 in chronic liver injury induced by carbon tetrachloride in rats." J.Hepatol.25. 529-537 (1996)
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[Publications] Yamauchi,T., et al.: "Noradrenaline and ATP decrease the secretion of triglyceride and apoprotein B from perfused rat liver." Pflugers Archives (European Journal of Physiology). 435. 368-374 (1998)
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[Publications] 岩井 将、他: "肝交感神経刺激による肝障害増強作用の解析" 自律神経. 33. 430-437 (1996)
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[Publications] Iwai,M., et al.: "Liver Innervation and the Neural Control of Hepatic Function (Ed,Shimazu,T.)" John Libbey & Co.(London), 502 (1996)