1996 Fiscal Year Annual Research Report
センダイウイルスに対する呼吸器粘膜局所免疫の機構解明
Project/Area Number |
08670346
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 哲也 広島大学, 医学部, 教授 (00022905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清谷 克寛 広島大学, 医学部, 講師 (00106824)
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Keywords | センダイウイルス / 組換えワクチニアウイルス / 感染防御 / 呼吸器粘膜免疫 |
Research Abstract |
マウスを自然宿主とするセンダイウイルス(SeV)は気道に限局して感染し肺炎を起こす典型的な呼吸器ウイルスである。本研究の目的は、組換えワアクチニアウイルス(RVV)の免疫によるマウスのSeV感染防御の機序を検討することにより呼吸器粘膜免疫の機構を明らかにすることである。得られた結果は以下のとおりである。 1.SeVの表面スパイク糖蛋白HNを発現するRVV (Vac-HN)は、経鼻接種によっても腹腔接種によってもマウスの鼻や肺で増殖したが、経鼻接種マウスとは異なり、腹腔接種マウスの上下部気道上皮にはウイルス抗原が検出されず、その増殖部位は接種経路によって異なっていた。2.Vac-HNあるいはVac-F (SeV表面スパイク糖蛋白Fを発現するRVV)で経鼻免役したマウスは、SeV感染に対して肺でも鼻でも強い抵抗性を示した。一方、腹腔免役したマウスは、肺では部分的な抵抗性を示したが、鼻では殆ど抵抗性を示さなかった。3.Vac-F免疫マウスから採取した鼻洗浄液(NW)、気管肺洗浄液(BAL)、血清中の抗F抗体を測定すると、経鼻免疫マウスのNWには特異IgA抗体が検出されたがIgG抗体は検出されず、BALにはIgA、IgG両抗体とも検出された。一方、血清中には経鼻、腔腹両免疫マウスとも同じレベルのIgA、IgG、中和抗体が検出されたにもかかわらず、腹腔免疫マウスのNW中にはIgA、IgG両抗体とも検出されず、BAL中ではIgG抗体のみが検出された。4.Vac-F経鼻免疫マウスの鼻部で見られた強いSeV抵抗性は、抗IgA抗体の経鼻注入によって有意に中絶されたが、抗IgG抗体によってはされなかった。 以上の結果より、マウスのSeVに対する免疫においては、粘膜で産生された分泌型IgA抗体が主要なメディエータであること、血清IgG抗体は主に下部気道における補助的メディエータであることが証明されたことになる。同時に、強力な粘膜免疫の誘導には粘膜におけるウイルス増殖が必須であることも明らかとなった。
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Research Products
(1 results)