1997 Fiscal Year Annual Research Report
慢性飲酒によるmitochondria DNAの変異の検討
Project/Area Number |
08670633
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
上嶋 康洋 金沢医科大学, 医学部, 助手 (20184921)
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Keywords | アルコール性肝障害 / mitochondria / mitochondria DNA / ATPase / deletion |
Research Abstract |
Mitochondria(Mt)DNAに及ぼす慢性飲酒の影響を明らかにするために、平成8年度では、末梢血から抽出したDNAについて、Mt DNAのATPase(8/6)をcodeする領域の変異の有無を検討した。大酒家の約6割に末梢血Mt DNAのdeletionが認められ、飲酒がMt DNAのATPase領域に傷害を与えていることが示唆された。そこで、平成9年度では、肝組織中のMt DNAに及ぼすアルコールの影響を明らかにするために、肝組織から抽出したMt DNAのdeletionについて検討を行った。アルコール性肝障害患者11例と非アルコール性肝障害患者7例の生検肝組織を用いて、Bernhardらの方法に準じてDNAを抽出した。Mt DNAのdeletionの分析は、ATP合成酵素を有する複合体Vの領域について、forward primer(5'-AACCAACACCTCTTTACAGTGA)およびreverse primer(5'-TTGGTGGGTCATTATGTGTTGT)を用いてPCRを行い、heteroplasmyとして出現する491bpのdeletionを検出した。アルコール性肝障害では、11例中6例(55%)にheteroplasmyが認められたが、非アルコール性肝障害と正常肝ではheteroplasmyは1例も検出されなかった。禁酒直後と禁酒4〜8週後の2回の肝生検を施行し得た症例についてみると、禁酒直後にみられたheteroplasmyは、禁酒4〜8週後には消失していた。しかし、肝Mt DNAでのheteroplasmyの出現状況とアルコール性肝障害の進展度との間に明らかな関連性はみられなかった。以上のごとく、飲酒は肝Mt DNAを直接的に傷害するが、その傷害は禁酒によって修復される可逆性の病態であると考えられた。
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