Research Abstract |
肝転移の治療と防止を目指し、Liposome化抗癌剤の動注,門注による治療効果を上げるため、臨床応用が可能なLiposome-Epirubicin (Lipo-EPR)の簡便な製作・調整法を検討した。Lipo-EPRは完全密閉系で無菌的に安全性があり、より徐放効果があるように、現在行っているliposome-adriamycinの製作・調整法に準じ行った。(1) Lipo-EPRの製作調整: liposomeの組成はegg lecithin : cholesterolのモル比を2 : 1としfreeze-dry法により1バイアルにegg lecithinとして75mgを含む脂質とEpirubicin : 10mgを含むものを調製した。再生は1バイアルごとに蒸留水5mlを注入し超音波法(トミ-精工社製:超音波発生機UD-200のカップホーン内でレベル6で10分間)にて調整し0.45μmのMillipore Filterを通し実験に使用した。(2) Lipo-EPRの門脈内投与後のEpirubicinの末梢血中移行:家兎をネンブタール麻酔下(25mg/Kg)に開腹し、門脈内に27ゲージのカテーテルを留置し各々Lipo-EPRを3mg/Kgを投与し3, 5, 15, 30, 60, 180分後に採血し血中Epirubicin濃度を測定比較した。その結果3, 5, 15, 30分後までの各々の平均値はLipo-EPR群では352, 325, 274, 196ng/mlであったがfree-EPR群では1295, 877, 264, 158ng/mlであり、3, 5分値ではfree-EPR群がLipo-EPR群より高かったが、15分値を境として30分値以後では反対にLipo-EPR群が高い傾向にあった。(3) Lipo-EPRの門脈内投与後のEpirubicinの臓器内移行:上記のfree-EPR, Lipo-EPRの同量を門脈内投与し、180分後にEpirubicinの各臓器(心臓,腎臓,脾臓,肺臓,肝臓,骨髄)への移行について検討した。その結果、Lipo-EPR群では心臓,腎臓,脾臓,肺臓,肝臓,骨髄への移行の各々の平均値は228, 335, 1560, 159, 928, 34ng/gであり、free-EPR群では2993, 17840, 9663, 3570, 6776, 1120ng/gであったが、Lipo-EPR群の症例数が少なく比較的検討が難しくさらに症例を加え検討をしている。(4) Lipo-EPRの門脈内投与後の血液生化学検査では大きな異常値は認められなかった。 以上、Lipo-EPR, free-EPRの門脈内投与を中心に検討を行っているが静脈内投与,肝動脈内投与によるEpirubicinの体内動態についての検討も行いつつある。Lipo-EPRの門脈内投与後Epirubicinの末梢血中移行の検討ではfree-EPRに比べ徐放効果を認める傾向にあるが更に症例を重ね検討する必要もある。
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