1998 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌症例の門脈血中K-ras変異発現に関する分子生物学的並びに臨床病理学的研究
Project/Area Number |
08671480
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Research Institution | JICHI MEDICAL SCHOOL |
Principal Investigator |
永井 秀雄 自治医科大学, 医学部, 助教授 (00164385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 小五郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (30049035)
栗原 克己 自治医科大学, 医学部, 助手 (20275697)
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Keywords | 膵癌 / 門脈血 / K-ras点変異 / PCR-RFLP法 / 磁気細胞分離 |
Research Abstract |
目的:膵癌診断のための簡便なマーカーとして血中K-ras変異の検出を試みた。 対象:臨床材料は膵疾患16症例を用いた。いずれも開腹手術例で切除および周術期において採血し、かつ転帰の確認しえた症例である。内訳は膵癌14列、膵インスリノーマ1例、慢性膵炎1例であった。 方法と成績: 1. 癌原発巣のK-ras変異の検出 組織切片はmicrodissectionの手法で腫瘍細胞を採取した。DNA抽出後、K-ras領域を増幅しPCR産物の配列を決定した。原発巣ではK-ras変異は85%に認められた。 2. 血中K-ras変異検出 磁気ビーズ付着の抗サイトケラチン抗体と磁石を用いて上皮細胞を濃縮する磁気細胞分離システムにより上皮細胞を濃縮した後、PCR-RFLP法を行った。コントロール実験にてRFLP法単独の検出感度が対正常型比10-4なのに対し、磁気細胞分離により濃縮した検体からは10-6〜10-7の検出感度を得た。膵疾患血液検体では、膵癌原発巣で変異を認めた全例に術中門脈血中および術後末梢血中に変異を認め、術前末梢血からも25%に変異を検出した。術前末梢血検出例はいずれも術後3-6月で再発死亡しており、転帰は極めて不良であった。 考察と結語:本検討から膵癌術前の血中浮遊変異細胞は対正常型比10-5より少なく10-7より多い割合で存在すると考えられた。このことから血中浮遊癌細胞の割合は個体あたり数千個と考えられ、手術などの侵襲により10倍程度血中に増加するするものと思われる。個体あたり数万個の血中浮遊癌細胞が存在する場合は、術前末梢血でも捉えられるが、予後絶対不良の例と考えられる。目的とした膵癌診断に繁がる分子生物学的手法の開発はならなかったが、予後絶対不良例を手術適応から除外するのには役立つ方法と考えられる。また、本研究を通し、膵癌症例における血中癌細胞の動態の一端が明らかになったと思われる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 永井秀雄 他: "胃十二指腸動脈温存PPPD.「粘液産生膵腫瘍」に対する膵切除の適応を含めて" 外科. 60(10). 1174-1179 (1998)
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[Publications] 永井秀雄 他: "No-touch isolatioin techniqueによる膵頭十二指腸切除-自治医大方式-" 胆と膵. 19(12). 1109-1114 (1998)
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[Publications] 永井秀雄 他: "膵管非拡張例に対する膵管胃粘膜吻合法" 手術. 51巻7号. 1487-1493 (1997)
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[Publications] 永井秀雄 他: "膵(管)胃吻合" 手術. 51巻11号. 1741-1746 (1997)
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[Publications] HIDEO NAGAI: "Quality of Life Recurrence-Free Patients After Pancreatoduodenectomy for Periampullay Cancer:A Statistical Comparison with Healthy People Without Surgery and Patients After Subtotal and Total Gastrectomy for Early Gastric Cancer" Pancreatoduodenectomy. 345-355 (1997)